医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.58、59】

今回は、分娩に関して病院側の責任が認められた高裁判決を2件ご紹介いたします。

1)最高裁判所がホームページのお知らせコーナー中の「医事関係訴訟委員会について」の項目で、医事関係訴訟に関する統計を公表していますが、そのうちの、「医事関係訴訟事件の診療科目別新受件数」によれば、産婦人科についての訴訟事件数が平成14年から平成16年にかけて増加傾向にあるようです。

2)今回ご紹介する事案の、No.58は出生した女児がまもなく死亡した事案で、No.59は重度の後遺障害が残った事案です。それぞれの「逸失利益額」を比較しますと、死亡した女児については約1220万円、後遺障害の女児については約3700万円となっており、死亡した場合の方が低くなっています。

このような差がでる主な理由は、死亡の場合の「逸失利益」の計算にあたっては、「生存していれば得られたであろう収入」から、「生存していれば、生活費としての費消したであろう支出」を控除するからです。

3)No.59の事案では、病院側が控訴し、患者側が「附帯控訴」をしています。

附帯控訴とは、被控訴人(控訴された側)が、相手方による控訴を機会に、その手続内で、自分のほうも不服申し立てをする手続きを指します。民事訴訟法293条1項は、「被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる」と規定しています。

本件では、一審判決が患者側の請求を一部認めて病院側に損害賠償請求を命ずる内容だったため、病院側は、元の判決を取り消して患者側の請求を全面的に棄却する判決を求めるために控訴をしました。そして、患者側は、自らは控訴をしなかったのですが、病院側の控訴に附帯控訴することで、一審の判決を自分に有利な内容に変更すること、つまり損害賠償額の増額を求める申し立てをしました。

カテゴリ: 2005年11月16日
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