医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.528、529】

今回は麻酔注射における医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.528の事案では、患者の損害について、裁判所は、患者(もともと針生検前の麻痺の程度が相当重い糖尿病患者)は、本件医療事故がなかったとしても車椅子での生活を余儀なくされ日常的に介護を要する状態であり、家事労働に従事することは無理であったと認められるとして、患者側が主張した車椅子生活のための家屋改造費、介護料及び休業損害と本件医療事故との間の相当因果関係を否定しました。

No.529の事案では、一審判決(東京地裁平成28年5月25日判決)も参考にしました。

この事案では、患者側は、一審で認定された慰謝料の額(30万円)が低すぎると主張し、その理由として当該病院を経営する学校法人が複数の医療機関等も保有している巨大組織であり、大きな利益を上げていることや、当該病院では「担当制」を採用しており、マンモトーム生検が主治医以外の医師によって実施された事実を挙げました。

しかし、控訴審裁判所は、控訴人(当該病院経営法人)が規模の大きい学校法人であることや、当該病院においてエコーガイド下マンモトーム生検を主治医以外の医師が実施する体制をとったことによって患者が被った精神的苦痛の内容や程度が左右されるものとは認め難いとして、患者の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2025年6月10日
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