医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.112、113】

今回は歯科医師の責任が問われた判決を2件ご紹介します。

No.112の判決は、歯科医師の治療行為自体にミスはなかったとして、債務不履行責任は否定されたのですが、治療費先払いでの治療契約が途中で終了した場合に、履行の割合を超えた部分については受領済みの治療費を患者に返還すべきとの判断が示されました。判決文中で、矯正治療契約の法的性質は「準委任」契約であると述べられています。

準委任とは、民法656条に規定されている「法律行為でない事務の委託」のことです。

患者が委任者、歯科医師が受任者という関係になり、その法律関係については民法643条から655条の「委任」(法律行為の委託)契約に関する規定が準用されます。

「請負」契約と違って、「準委任」契約は「仕事の完成」を目的とするものではないという点は、歯科治療だけでなく、治療契約一般にもあてはまるといえます。

No.113の判決は、歯科医師に過失があったこと自体については双方に争いがなく、損害賠償額の算定が争点となった事案です。

判決文中に「後遺障害等級」という用語が出てきますが、これは、自動車損害賠償法施行令第2条別表での等級を指しているものと思われます。訴訟での医療事故の損害額の算定は、交通事故の損害額算定基準とほぼ同様に考えられています。

また、中間利息の控除の計算式としては、ホフマン式とライプニッツ式とがありますが、これについて、最高裁判所はどちらの方法でもよいとしているようですが、東京地方裁判所はライプニッツ式を採用しているようです。

どちらの判決も、歯科に限らず実務上の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2008年2月13日
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