医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.462、463】

今回は、患者が死亡した事案で、薬剤投与に関する医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.462の事案では、医師の過失と患者の死亡との因果関係も争点となりました。

この点につき、裁判所は、医師が抗凝固薬の休薬期間を手術前1週間ではなく、長くとも78時間程度としていれば、休薬後の心房内の血栓の形成と成長に要する時間を5日間短くすることができ、より脳梗塞発症の危険性を低い状態に置くことができていれば、相当程度の可能性をもってその発症を防ぐことができ、患者が生存していたとは言えるにしても、患者が現実に死亡した時点においてなお生存していた「高度の蓋然性」があるとまでは認めることができないとして、過失と死亡の間の因果関係を認めませんでした。

しかし、患者が現実に死亡していた時点においてなお生存していた「相当程度の可能性」があったにもかかわらず、医師が手術前1週間と回答し、これにしたがった休薬が実施されたために、その生存の可能性を侵害されたのであるから、最高裁平成12年9月22日第二小法廷判決を引用して、病院及び医師には、患者が被った損害(慰謝料)を賠償する責任があると判断しました。

No.463の事案では、説明義務違反も争点となりました。そして、裁判所は、本件処方は、ラミクタールの添付文書に記載された用法・用量に従わない処方であり、そのような処方によって致死率が高いTEN及びSJS等の重篤な皮膚障害が現れる可能性があることから、このような処方を行う医師には、添付文書と異なる処方を行う理由や、その場合に起こり得る副作用の内容や程度等について、患者が具体的に理解し得るように説明すべき義務があったと判示し、しかし、被告医師らは、通常よりも投与量が多いということや、皮膚症状が出現した場合の対応等について説明したにとどまり、SJSやTENを発症する可能性や発症した場合の治療方法等については説明していないから、被告医師らにはラミクタール投与に関する説明義務違反があったと認定しました。

更に、上記説明義務を尽くしていれば、患者やその夫がサンバの大会への出場を希望していたことを考慮しても、用法・用量を遵守しない場合の副作用の発現率の高さや副作用の重篤性にかんがみて、本件処方に同意しなかった高度の蓋然性があると認められるとして、説明義務違反と患者の死亡との間の相当因果関係も肯定しました。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2022年9月 8日
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