医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.490、491】

今回は、帝王切開手術の遅れに関して、病院の責任が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.490の事案では、帝王切開の既往のある妊婦に対する陣痛促進剤オキシトシンの投与についても、争点となりました。

そして、裁判所は、過強陣痛による子宮破裂や胎児仮死を招く危険性があることから、分娩を担当する医師は、オキシトシンの使用を避けるか、投与する場合には分娩監視装置による陣痛や胎児心拍等を厳重に観察しながら過強陣痛を招かないように注意して投与を行い、過強陣痛が疑われるときには直ちに投与を中止する義務があると判示しました。

そして、本件では被告病院の医師は投与前の診察もせず、助産師と看護師のみによる不十分な監視しかできない状況の下で、オキシトシン投与を指示して実施させたと指摘し、このため、妊婦の子宮破裂の危険性を一層高めるに至ったことが一応推測されるが、しかし、このオキシトシンの投与によって過強陣痛を引き起こし、そのために本件での子宮破裂を招くに至ったか否かについては、これを確認するだけの証拠はないと判示し、オキシトシンの投与については注意義務違反があることは否定できないが、この注意義務違反と本件子宮破裂との間に因果関係があると断ずることはできないと判断しました。

No.491の事案では、病院側は、2010年の本件分娩よりも後に発刊された2011年版ガイドラインではなく、2008年版ガイドラインが本件で適用されるべき医療水準であると主張しました。

しかし、裁判所は、本件分娩の時点で2011年版ガイドラインのうち、少なくとも分娩監視装置モニターの読み方やそれに基づく対応のありように関する部分については、いわゆる医療水準を構成するものであったというべきであるし、基線細変動の消失を伴って繰り返す一過性徐脈が見られる場合に仮死の危険性が高く、帝王切開の適応となることは以前から文献等で指摘されていたものであるとして、病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2023年11月10日
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