医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.474、475】

今回は、転倒事故により骨折し手術を受けた患者について、医師に骨折手術後の治療につき過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.474の事案は、原告(患者)の左足壊死の直接的かつ主要な原因とみられる前脛骨動脈及び後脛骨動脈の損傷は、原告が無免許でオートバイを運転中にマンホールの上で転倒するという事故の際に生じたものと推認されるものでした。

そして、裁判所は、上記両動脈の損傷は原告の上記行為の結果とも言い得るから、被告医師が血管損傷の存在を看過し、その後の全面的な損傷への進行をゆるした過程により、原告の左足壊死及び切断の結果に対する不法行為に基づく損害賠償責任を負うとしても、上記事情に照らせば、左足壊死による損害の全てを被告医師のみに負担させることが当事者間の公平に適うとは到底考えることができないとして、損害の公平な分担という不法行為法の理念に照らし、過失相殺の法理を類推して、相当の減額をすべきであると判示して、弁護士費用以外の損害につき、3割を減額しました。

No.475の事案では、病院側は、原告(患者)の希望により早期退院したこと、退院後の患肢の安静不足及び水疱破綻後速やかに医療機関を受診しなかったことなど、原告にも相応の帰責事由がある旨主張しました。

しかし、裁判所は、原告が退院を希望していたこと自体は認められるものの、医学的知見を有しない原告が、入院継続の必要性を理解し、又は医師から説明を受けていたというような事情も認められない本件において、原告が退院を希望したことをもって過失相殺をすべき理由になると解することはできないと判示して、病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2023年3月10日
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