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選択のポイント【No.484、485】

今回は、医師の判断(手術方法選択や薬剤投与方法)につき、過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.484の事案では、病院側は、バッシーニ法を選択した理由として、(1)これまでの小児鼠径ヘルニア手術例のうち約3分の1についてはバッシーニ法を採用してきたが、本件以前の手術で睾丸萎縮等の合併症を惹起したことがなかったこと、(2)患児のヘルニアは比較的大きなものであり、ヘルニア門が広かったので、鼠径ヘルニア再発防止のため精索の後壁を他の筋肉で補強する(内鼠径輪の縫縮を伴う)必要があったこと、(3)患児のヘルニアには陰嚢水腫を合併しており、睾丸組織をヘルニア嚢から剥離して引き出すことが必要で、このためには、鼠径部に操作を加えずヘルニア嚢だけを剥離して取り出す方法(ボッツ法及びファーガソン法)は適切でなかったことの3つを挙げて、バッシーニ法を選択したことは、昭和54年当時の医療水準に照らして誤りではないと主張しました。

しかし、裁判所は、これらはいずれもバッシーニ法採用の合理的な理由とは認めがたいと判示して、病院側の主張を採用しませんでした。

No.485の事案では、病院側は、鎮静の深度が足りない患者に対し、安全に治療を行うために迅速にミタゾラムの追加投与を行う必要があり、持続静脈注射等の緩徐な投与を行うことは現実的ではない旨や、内視鏡検査時でさえ、総量0.12mg/kgの投与を要したところ、より苦痛の大きい本件手術において、総量0.14/kgとなるような追加投与を行うことは妥当であった旨主張しました。

しかし、裁判所は、総量0.14/kgのミダゾラムが多量であることや、内視鏡検査時にも患者のSpOが低下した状況を踏まえ、鎮静剤の投与方法に注意しなければ低酸素血症を招くということは、医学的知見に照らせば、医師らとしても当然に予見し得たものであるし、本件手術時のELVが予防的治療であって、安全に鎮静が行えないなら実施を取りやめるという判断も十分可能であったとして、病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2023年8月10日
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