医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.5、6、7】

今回は、最高裁判所のホームページで紹介された、地方裁判所の判決からご紹介します。

No.5は、刑事事件の判決です。量刑の理由を読むと、民事事件の判決とは視点が異なる部分も多いと感じられると思います。

なお、「禁錮」というあまり馴染みのない刑が宣告(ただし執行猶予付き)されています。「懲役」と「禁錮」は、刑務所に行くという意味では一緒ですが、禁錮刑は、主に過失犯や破廉恥でない犯罪を対象とし、刑務所内での作業が科せられていない点が懲役刑と異なります。 そして、「禁錮1年、執行猶予3年」ということは、3年間を再犯など起こさずにすごせば刑務所に行かなくて済むが、再犯などの問題を起こせば執行猶予が取り消されて、改めて1年間の禁錮刑に服さなければならないということです。

No.6の判決紹介のうち、争点3(損害)の箇所は「逸失利益」という馴染みのない用語が出てきて分かりにくいと思います。

逸失利益とは、死亡した患者が生きていれば一生の間に得られたであろう利益のことです。一生の間に得たであろう収入から、生存していたとしても生活費で消費したはずの額を控除(この控除割合のことを「生活費控除率」といいます)した残りが、将来得たであろう利益なのです。本来であれば生涯かかって得られるものを、現時点で一括で受け取るわけですから、現在価値に引き直す(中間利息を控除する)必要があり、そのために用いられる係数がライプニッツ係数です。

標準的な逸失利益の算出式は
収入額あるいは平均賃金(年収)×(1�生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
です。

なお、死亡ではなく、障害を負った患者についての逸失利益の算出式は、生活費控除は無い代わりに労働能力喪失率という別の概念が加わり、
収入額あるいは平均賃金(年収)年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
となります。

この他損害賠償の項目としては、逸失利益の他に、葬儀費用・入院費用、休業損害、(死亡)慰謝料、(後遺症)慰謝料、弁護士費用等があります。

弁護士費用として裁判所が認める額としては、弁護士費用以外の賠償額合計の1割程度というのがひとつの目安になっています。実際にかかる弁護士費用は裁判所が認める額よりも高額であるのが通常です。

カテゴリ: 2003年10月31日
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