医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.66、67】

今回は、輸血に関する判決を2件ご紹介します。

どちらも、輸血を伴った手術について、手術自体には問題がなかったにもかからわず訴訟で病院側の責任が認められました。

No.66は、宗教上の信念から、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している患者に対して、輸血を行う可能性があることを説明しないまま手術を行い、輸血を実施したことが、患者の人格権を侵害したと認定された事案です。最高裁判所の判例でもあり、マスコミでも大きく取り上げられました。

No.66の判決紹介に際しては、一審の東京地方裁判所平成9年3月12日判決(判例タイムズ964号82頁)、東京高等裁判所の平成10年12月9日判決(判例時報1629号34頁)も参考にしました。

No.67は、輸血の致死的副作用についての対応処理がなされなかった点が問題とされ、輸血用血液を供給した日本赤十字社が被告の一人となった事案です。

判決中、日本赤十字社について、日本で唯一の血液事業を営む法人であり、血液事業と医療事業は全く独立に行われており、血液事業は独立採算制になっていること、血液事業を担当している血液センターは、献血者から採血したものを検査のうえ輸血用血液にして供給することをその業務とし、献血者の健康状態を診察するために診療所としての許可は得ているものの、医療機関ではないこと、血液製剤を供給する行為は医療機関として行っているのではなく、医薬品を製造販売する組織として行っていることなどが指摘されています。

また、輸血用血液は、人の組織の一部であり、一人一人異なる献血者の血液そのままを、成分ごとに分離したものであるという点では、科学的に合成されて製造される医薬品とは異なる(ただし、薬事法上は医薬品として位置づけられている)との見解も示されています。

血液を供給する日本赤十字社の役割と責任についての裁判例として、興味深いといえます。

カテゴリ: 2006年3月14日
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