医療判決紹介:最新記事

2022年の記事一覧

2022年10月 7日
選択のポイント【No.464、465】

今回は、入院・入所中の患者・入所者が転倒、負傷した事故につき、病院・施設側の責任が認められた裁判例を2件ご紹介いたします。 No.464の事案では、裁判所は、貧血で失神を起こして病院内の身体障害者用トイレで転倒した患者について、患者も、排便後立ち上がり、降ろしていた下着を戻した時点で、ナースコールで...

2022年10月 7日
No.465「介護老人保健施設の入所者が汚物処理場で転倒し、負傷。施設経営法人に債務不履行責任及び工作物責任を認めた地裁判決」

福島地方裁判所白河支部平成15年6月3日判決 判例時報1838号116頁 (争点) 債務不履行責任の有無 民法717条の責任の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇(当時95歳の女性)は、社会福祉法人△との間で、平成12年10月27日ころ、◇が△の設置経営する介護老人施設(以下、...

2022年10月 7日
No.464「虫垂切除術を受け、その後下血の続いた入院患者が、貧血で失神を起こしてトイレで転倒。患者に重い後遺障害が残ったことにつき医師らの過失を認めた地裁判決」

名古屋地方裁判所豊橋支部平成15年3月26日判決 判例タイムズ1188号301頁 (争点) 医師および看護師らの術後管理上の過失の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇(転倒事故当時26歳の女性)は、平成8年7月4日午後8時(以下、特段の断りのない限り、同月のこととする。)ころ、...

2022年9月 8日
選択のポイント【No.462、463】

今回は、患者が死亡した事案で、薬剤投与に関する医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.462の事案では、医師の過失と患者の死亡との因果関係も争点となりました。 この点につき、裁判所は、医師が抗凝固薬の休薬期間を手術前1週間ではなく、長くとも78時間程度としていれば、休薬後の心房内の血...

2022年9月 8日
No.463「膠芽腫の再発により生命予後は約3ヶ月と予測されていた患者が中毒性表皮壊死症による両側肺炎及び肺出血により死亡。添付文書の用法・用量の定めに反した抗てんかん薬を処方した医師の過失を認めた地裁判決」

東京地方裁判所令和2年6月4日判決 ウェストロージャパン (争点) 医師のラミクタールの投与上の過失の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 平成25年9月1日、A(死亡当時43歳の女性)は意識を失って倒れ、搬送先の病院において左前頭葉出血を伴う脳腫瘍を指摘され、同月7日、C病院に転...

2022年9月 8日
No.462「大腸ポリープに対する内視鏡的粘膜切除術を受けた翌日に患者が脳梗塞を発症して死亡。患者が常用していた抗凝固薬の休薬期間について、不適切に長い休薬期間を回答した医師の過失を認めて、慰謝料の支払を命じた地裁判決」

東京地方裁判所令和元年9月12日判決 ウェストロージャパン (争点) 医師がリバーロキサバンを手術の1週間前から中止すればよいと回答したことについて過失があるか否か *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(死亡当時62歳の男性)は医療法人社団△2の開設する病院(以下「△病院」という。)...

2022年8月 9日
選択のポイント【No.460、461】

今回は、患者が死亡し、医師が刑事事件で有罪(業務上過失致死罪)となった事案を2件ご紹介します。紹介にあたり、それぞれの出典(判例時報及び判例タイムズ)の解説も参考にしました。 No.460の事案では、誤接続をした看護師につき、既に罰金刑が確定しているとのことでした。 No.461の事案では、肝臓外科...

2022年8月 9日
No.461「肝臓外科専門医でなく、肝臓切除手術の執刀の経験もない医師が不十分な人員態勢で手術を実施し、大出血により患者が死亡。医師の刑事責任(業務上過失致死罪)を認めた地裁判決」

奈良地方裁判所平成24年6月22日判決 判例タイムズ1406号363頁 (争点) 医師の注意義務の存在及び注意義務違反の有無 *以下、患者をA、被告人を△と表記する。 (事案) A(事件当時51歳)は、他の病院2箇所に入院した後、平成18年1月10日、慢性肝炎、高血圧及び狭心症などの検査及び治療の目...

2022年8月 9日
No.460「手術の麻酔の際に、看護師が酸素と笑気の接続を間違え、患者が死亡。接続点検・安全確認を怠った麻酔担当医の刑事責任(業務上過失致死罪)を認めた地裁判決」

神戸地方裁判所尼崎支部 昭和49年6月21日判決 判例時報753号111頁 (争点) 麻酔担当医の過失 *以下、患者をA、被告人を△と表記する。 (事案) △は、昭和39年に医師免許を取得し、昭和44年2月から市立病院(以下、「△病院」という。)において外科医として勤務していた。 昭和48年2月28...

2022年7月 8日
選択のポイント【No.458、459】

今回は、麻酔薬の投与後に患者が死亡し、注射や麻酔管理における医師の過失が認定された地裁判決を2件ご紹介いたします。 No.458の事案では、患者が意識消失、呼吸停止直後の低酸素血症、心循環機能低下に対する救命措置上の過失も争点となりました。 この点につき、裁判所は、(1)医師がエピネフリンを投与しな...

2022年7月 8日
No.459「先天性心疾患に罹患していた患児が、双方向グレン手術の適応を判断する心臓カテーテル検査を受ける際の麻酔投与後に急変しその後死亡。小児科担当医師らの麻酔管理の過失を認めた地裁判決」

東京地方裁判所平成30年6月21日判決 判例時報2406号3頁 (争点) 麻酔管理に関する過失の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(死亡時2歳)は、平成16年7月にH病院において双胎第1子として出生したが、同月8日に受けた心エコー検査の結果、完全型心内膜床欠損症、心房中隔欠損...

2022年7月 8日
No.458「肩こり等の治療のため、局所浸潤麻酔注射を受けた患者が注射直後に意識喪失、心肺機能停止に陥りその後死亡。医師に注射施術上の過失等を認めた地裁判決」

大津地方裁判所平成8年9月9日判決 判例タイムズ933号195頁 (争点) 注射の施術上の過失の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(死亡時58歳の主婦)は、平成2年9月3日、△医師が内科、胃腸器科、循環器科の看板を掲げて経営する医院(以下「△医院」という。)を初めて受診し、右...

2022年6月10日
選択の視点【No.456、457】

今回は、医療事故に関連して、カルテ・診療録の改ざんを行った医師・病院に対して、慰謝料の支払いが命じられた裁判例を2件ご紹介します。 No.456の判決紹介に当たっては、別冊ジュリスト183号「医事法判例百選」34頁「16 診療録の改ざん」も参考にしました。 No.456の裁判例では、原告(患者遺族)...

2022年6月10日
No.457「白内障の手術を受けた後、左眼を失明した患者について、医師のカルテの改ざんおよび説明義務違反を認めた地裁判決」

東京地方裁判所令和3年4月30日判決 判例タイムズ1488号177頁 (争点) カルテの改ざんおよび虚偽説明の有無 手術適応の前提となる説明義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 第1 平成12年2月頃から平成25年の再受診まで ◇(昭和8年生まれの男性)は、平成12年2月...

2022年6月10日
No.456「出産後に母子が死亡したことにつき、医師の診療録等の改ざんを認定し、不法行為責任(説明義務違反)に当たるとして遺族からの慰謝料請求を認めた地裁判決」

甲府地方裁判所平成16年1月20日判決 判例タイムズ1177号218頁 (争点) 患者の死亡に対する医師の過失の有無 診療録改ざん行為等に対する慰謝料請求の可否 医師が出生後死亡した児を死産としたことに対する慰謝料請求の可否 ※以下、原告を◇1◇2◇3、被告を△と表記する。 (事案) A(当時32歳...

2022年5月10日
選択の視点【No.454、455】

今回は特殊事情のある患者についての転送義務・他科での入院治療を検討すべき義務違反が認められた裁判例を2件ご紹介いたします。 No.454の事案では、転送義務違反と死亡との因果関係や慰謝料の額も争点となりました。 裁判所は、医師が転送義務を尽くしていれば、実際の死亡時点において患者がなお生存していたで...

2022年5月10日
No.455「医師が、高齢の患者についてうつ病として精神科での入院治療を検討すべき注意義務に違反したとして、遺族への慰謝料の支払いを命じた地裁判決」

大阪地方裁判所令和3年2月17日判決 医療判例解説2021年8月(93)号41頁 (争点) うつ病の診断及び治療等についての医師の注意義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和8年生まれの女性)は平成26年9月9日頃、S病院において心気症と診断され、軽いうつ状態の所見...

2022年5月10日
No.454「刑務所に勾留中の者がけいれん発作を起こし死亡。刑務所の法務技官医師に転送義務違反を認めた地裁判決」

高知地方裁判所平成28年2月2日判決 判例時報2302号84頁 (争点) 転送義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和28年生まれ。起訴されたため平成21年6月23日から△刑務所内の拘置場で勾留されていた)は、平成21年7月8日午前中(以下、同日の出来事については...

2022年4月14日
選択の視点【No.452、453】

今回は陣痛誘発剤・陣痛促進剤の投与後に出産した妊婦が大量出血によって死亡したことについて医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.452の事案では、患者遺族は転送義務違反も主張しました。 しかし、裁判所は転送時期としては再出血後で一応の出血軽減の時点以降、血液の届く以前の時点(午後4時...

2022年4月14日
No.453「出産後に大量出血し、敗血症で死亡。医師の陣痛促進剤の投与上の過失が認められた地裁判決」

山口地方裁判所平成5年3月31日判決 判例タイムズ824号197頁 (争点) 陣痛促進剤投与に関する過失の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(初産婦)は、昭和62年9月3日午前3時ころ陣痛が始まり、だんだんと強くなってきたので、同日午前6時30ころ、以前から通院していた△2...

2022年4月14日
No.452「不要な陣痛促進剤の過剰投与をし,輸血量も不足していたため妊婦が出産後に弛緩出血による大量出血により死亡。医師の不法行為責任が認められた地裁判決」

広島地方裁判所平成2年3月27日判決 判例タイムズ730号205頁 (争点) 陣痛誘発上の過失 プロスタルモンE錠を一度に2錠投与した過失 輸血上の過失 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(死亡当時31歳の女性。パチンコ店を夫と共同で経営)は、第四子を妊娠したため、昭和60年1月7...

2022年3月 9日
選択の視点【No.450、451】

今回はX線(レントゲン)検査について読影した医師の過失の有無や損害が争点となった裁判例を2件ご紹介します No.450の事案では、第二次判定医が「要経過観察1年後」と診断した根拠の一つとして、「陰影が石灰化による像であろうと考えたが、写真撮影の限界もあるので断定を避けた」との主張がされましたが、裁判...

2022年3月 9日
No.451「レントゲン検査の写真から医師が右大腿骨頸部骨折を読影できず、骨接合術が行われなかった。その後患者は人工股関節置換手術に至る。医師に骨折を発見しなかった過失を認め、一定の範囲で損害賠償を命じた地裁判決」

東京地方裁判所令和2年3月26日判決 医療判例解説93号103頁  (争点) 初診時に右大腿骨頸部骨折を発見しなかった医師の過失と相当因果関係のある損害 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 平成27年12月20日、◇(診察当時51歳の女性)は、犬の散歩中に転倒し、右大腿骨頸部を骨折し、...

2022年3月 9日
No.450「肺癌で死亡した患者につき、定期健康診断の胸部エックス線写真を読影した医師の過失が認められた地裁判決」

奈良地方裁判所平成15年9月26日判決 判例タイムズ1187号288頁 (争点) 平成7年、8年の各健康診断で撮影された胸部エックス線間接撮影写真につき、担当医が肺癌等の異常を疑う所見を見落として精密検査を勧めなかった過失の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(会社勤務の男性)...

2022年2月10日
選択の視点【No.448、449】

今回は死亡した患者について、必要な検査をしなかった医師の過失が認められた事案を2件ご紹介します。 No.448の事案(胃潰瘍を疑った検査の懈怠)では、病院側は、患者の腹部の経過は順調であったが肺気腫による慢性呼吸器障害に、再発肺がんが両肺に転移播種し、呼吸不全が継続、悪化し死亡に至ったと主張しました...

2022年2月10日
No.449「肺がんの手術の既往歴のある患者が肺アスペルギルス症を発症して死亡。医師が呼吸器感染症の病原菌を特定するための検査を行わなかったとして、病院側の過失を認めた地裁判決」

さいたま地方裁判所平成13年9月26日判決 判例タイムズ1183  号306頁   (争点) 医師の注意義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(平成9年の死亡当時60歳の男性)には、昭和62年11月にB医大病院において肺がん手術を受け、左肺上葉を切除した既往歴があった。...

2022年2月10日
No.448「肺がんの手術後肺気腫に罹患した患者が胃潰瘍を悪化させ、穿孔による急性腹膜炎を発症し緊急開腹手術後に死亡。医師に胃潰瘍の存在を疑い検査をしてこれを発見し適切な薬物療法を行うべき注意義務違反を認めた地裁判決」

大阪地方裁判所平成10年2月16日判決 判例時報1666号102頁 (争点) 胃潰瘍の存在を疑い検査をしてこれを発見し、適切な薬物療法を行うべき注意義務の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和63年の死亡当時67歳の男性)は肺気腫の既往症があり、かかりつけ医の紹介により、医...

2022年1月 7日
選択の視点【No.446、447】

今回は医師の説明義務違反が認められた判決を2件ご紹介します。 No.446の事案紹介にあたっては、一審判決(仙台地裁昭和61年4月10日判決・判例タイムズ616号122頁)も参照しました。 No.446の事案では、裁判所は重大な危険性を伴う手術における医師の説明義務について次のように述べました。 「...

2022年1月 7日
No.447「膵頭十二指腸切除術を受けた患者が、縫合不全に起因する多臓器不全発生のため、死亡。病院側に説明義務違反を認めた事案」

大阪地方裁判所平成10年12月18日判決 判例タイムズ1021号201頁 (争点) 術前の説明義務違反の有無 術後の経過観察義務違反、縫合不全の早期発見義務違反、縫合不全に対する適切な治療義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(手術当時68歳の男性)は、平成元年5月上旬...

2022年1月 7日
No.446「椎間板ヘルニアの患者を脊髄腫瘍と判断して手術をしたが、術後、患者が下半身麻痺に。国立病院医師が椎弓切除手術の高度な危険性を説明せず、患者の決断・選択の機会を侵害し、自己決定権を奪ったとして国に損害賠償を命じた高裁判決」

仙台高等裁判所平成6年12月15日判決 判例タイムズ886号248頁 (争点) 診断上の過誤の有無 手術方法選択上の過誤の有無 手術中止義務の懈怠の有無 説明義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 昭和49年、◇1(事件当時35歳の男性)は下肢の異常を感じ、国である△の開設...

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