医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.326、327】

今回は、病院側の説明義務違反が認められた高裁判決を2件ご紹介いたします。紹介にあたっては、それぞれの一審判決も参考にしました。

No.326の事案では、手術の危険性や死亡率の説明の有無につき、一審と控訴審で判断が分かれました。看護記録に「危険率は1割」との記載がある点についても、一審は、それが足の障害についてのものであるとは付記されてはいないことなどから、死亡に至る危険性という趣旨で説明されたと推認しましたが、控訴審は、術後の足の障害発生率について述べたものであるとの疑いが残ると判断しました。

No.327の事案では、患者退院時の院長の説明内容について争点となり、病院側は、患者の症状について、内科的な疾患によるものではなく精神的な原因であるかのような説明をした事実はなく、症状の原因を探るために様々な検査の実施を予定していることについても説明して説得を試みたにもかかわらず、患者の妻がこれを拒否して患者を退院させた旨主張しました。

しかし、裁判所は、院長が説明内容について記憶がないと供述していること、診療録や看護記録に病院側の主張するような説明を窺わせる記載がないこと、転院先の看護記録に、患者の四男が看護師に対し、「前の病院では『大丈夫』と言われてて、僕たちはそんなことないやろと思ってたんですが信じるしかなかったんです」と述べた旨記載されていること等から、院長の説明内容について、病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2017年1月23日
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