医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.240、241】

今回は、手術後に患者が死亡した事案で、術後の医師の対応に過失が認められた判決を2件ご紹介します。

No.240の事案のご紹介にあたっては、判例時報の解説も参考にしました。ただし、高裁判決のため、一審判決引用部分の具体的内容が分からず、事案の詳細がご紹介できない部分があります点をご了承下さい。なお、原文に「看護婦」とある箇所は現在の表記にあわせて「看護師」と修正しております。

No.240の事案では、遺族は病理解剖を拒否しました。そして、訴訟において、遺族は患者の死因が縫合不全にある旨主張し、膵炎だったとする病院側の主張との間で争いが生じていました。この点について、病院側は死因の「立証妨害」であり、信義則上、遺族が患者の死因を争うことは許されないと主張しました。

しかし、裁判所は、第二手術後、病院医師らが遺族に対し患者が縫合不全を起こしていたことを告げて説明しており、遺族らはその説明通り縫合不全を信じていたのであるから、遺族が死因につき、縫合不全と主張することが信義則上許されないとは認められないと判断しました。

No.241の判決文の中では、病院側の過失の認定にあたって「本件証拠として裁判所に提出されている本件診療録は相当程度改ざんもしくは抜粋されたものである疑いが強い。」との指摘があり、また、慰謝料を2500万円とした理由の中でも、「前述のような診療録の不備や証拠保全手続における被告(医療法人)の不誠実な対応が事実関係の究明を防げ、原告ら(患者遺族ら)の精神的な苦痛を強める結果になったことは否定できない。この間の原告らの疲労、被告への不信感は察するに余りあるものがある。」との指摘がなされています。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2013年6月 5日
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