医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.266、267】

今回は、いわゆる期待権侵害に関する判決を2件ご紹介します。

紹介にあたっては、判決掲載誌(判例タイムズ)の解説も参考にしました。

平成12年9月22日の最高裁判決は、「疾病のため死亡した患者の診療に当たった医師の医療行為が、その過失により、当時の医療水準にかなったものでなかった場合において、右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負う」と判示し、この法理はその後の最高裁判決により、債務不履行責任にも適用され、また、重大な後遺症事案にも適用されることになりました。

平成12年の最高裁判決は、「医療水準にかなった医療行為が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性」という法益の侵害を認めたもので、「期待権侵害」については言及していませんでした。

No.266の事案は、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性があったとして、損害賠償責任を認めていることに加え、病院側の説明不十分など、医療行為として不十分な点が散見されることも指摘し、医療水準にかなった適切な治療を受けるという患者側の期待権を侵害したと判示して、いわゆる「期待権侵害」も認めています。

他方、No.267の事案は、期待権侵害のみを理由とする不法行為責任は、医療行為が著しく不適切なものである事案については検討するが、そうでなければ不法行為責任の有無を検討する余地はないとしました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2014年7月10日
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