医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.444、445】

今回は、手術後の縫合不全に対する術後管理上の過失から患者が死亡し、病院側の損害賠償責任が認められた事案を2件ご紹介します。

No.444の事案では、病院側は十二指腸盲端部の縫合不全を否定しました。

しかし、裁判所は、患者の解剖の結果によっても、十二指腸盲端部に糸のほつれといった明らかな縫合不全は認められなかったというのであるが、同時に、十二指腸盲端部付近の組織の癒着、壊死がもっともひどいという状態であったことからみて、糸のほつれといった明らかな縫合不全とはいえないにしても、同所の縫合部に何らかの漏れが生じたと推定されるというのであり、また、第2回目の開腹手術の際、十二指腸盲端部及び空腸と空腸との吻合部の付近には大量の血液様の膿汁があってその部分が少し癒着したようになっていたというのであるから、これらの事実を総合すると、患者の1回目の開腹手術の際、十二指腸盲端部の縫合手術について何らかの縫合不全が生じたものとみるべきであると判示して縫合不全を認めました。

No.445の事案では、患者遺族側は、縫合不全が手術手技上の過失に基づくものだという主張も行いました。

しかし、裁判所は、縫合不全の原因は、全身的因子として、栄養状態、慢性疾患、ショック等があり、局所的因子として、吻合部血行障害、吻合部過緊張、吻合部の感染、手術手技上の問題その他であること、胃癌根治手術実施後における縫合不全発生の頻度は、医療施設による差異はあるものの、平均的には2から3%の割合で発生していることが認められるとして、吻合手技上の過失はいくつかある縫合不全の原因の一つにすぎないのであるから、縫合不全の存在のみから手術手技上の過失を推認することはできず、他には手術手技上の過失を認めるに足りる証拠はないと判示して、この点に関する患者遺族の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2021年12月10日
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