医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.52、53】

今回は、看護師(判決当時は「看護婦」の用語が使用されていました)の過失が争点となった判決を2件ご紹介します。No.52では看護師に過失があると認定され、No.53では、看護師の過失は否定されましたが、担当医には過失があると認定されました。

戦前の判例には、看護師は医師の手足のようなものであり、看護師の仕事はすべて医師の責任であるという考え方が見受けられましたが、戦後は看護業務の重要性・独自性が認識されるようになり、またチーム医療における業務分担が明確化していくなかで、看護師が医師とは別個独立に責任を負うと判断されることが増えてきました(信山社発行の「看護事故判例の理論」(菅野耕毅著)をご参照ください)。今後もこの傾向は続くと思われます。

なお、看護師の過失を理由とする損害賠償請求において、当該看護師自身を被告としていないケース(No.52もその一例です)がまま見られますが、これは、被害者救済の観点からは、資力に限度のある個々の看護師の責任を追及するよりも、その使用者である病院の責任を追及することが実際上の意義を有することが多いこと、訴訟技術上も、個々の看護師の責任を明確にしづらい場合でも、病院の体制そのものの不備を追及することで病院の責任が認められる可能性もありますので、そのような場合には、個々の看護師を被告としない方が訴訟遂行をしやすいという判断が働く場合があること、などが理由と考えられます。

カテゴリ: 2005年8月25日
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