医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2017年4月20日
No.332 「新生児が、低酸素性虚血性脳症の症状を呈する新生児仮死を伴って出生。助産師に、分娩監視装置による適切な胎児心拍数の観察を怠った過失があるとして、病院側に損害賠償を命じた地裁判決」

東京地方裁判所平成5年3月22日判決 判例タイムズ857号228頁 (争点) 病院側の過失及び結果との因果関係の有無 (事案) X1は昭和56年11月ころ妊娠(夫はX2)し、昭和57年2月25日からY医療法人の開設する医療センター(以下、Y医療センターという)において継続的に診療を受け、出産予定日で...

2017年3月15日
選択の視点【No.330、331】

今回は、医師の誤診や、手術の適応に関する医師の過失が認められた事案をご紹介いたします。 No.330の事案では、病院側は、「初診時のCT画像は一般外科医において一義的に肝嚢胞(実際は水腎症でした)と考えてもやむを得ないものであり、このように考えると以後見解を修正することはできないから、担当医師は無過...

2017年3月15日
No.331 「大学病院で右側前大脳動脈遠位部動脈瘤のクリッピング手術を受けた患者に重篤な後遺症。具体的な手術適応を欠いた手術を実施した担当医師の過失を認めた地裁判決」

東京地方裁判所平成12年5月31日判決 判例タイムズ1109号214頁 (争点) 手術適応に関する担当医師の判断の誤りの有無 (事案) 平成4年7月4日、X1(当時48歳の女性・主婦)は、他界した母親を追いかけるような感じで「帰らないでくれ」と言いながら家の中を走り回ったり、玄関の鍵を掛けたりして、...

2017年3月15日
No.330 「血尿が出たため受診した患者が実際は水腎症だったが、巨大肝嚢胞と誤診されて手術を受けたところ、手術中に2度の心停止を起こし、その後死亡。医師の責任が認められた事例」

浦和(現さいたま)地方裁判所平成11年10月15日判決 判例時報1719号109頁 (争点) Y1医師の過失の有無 Y1医師の過失とAの死との相当因果関係の存否 (事案) 平成5年1月5日、A(個人事業主の34歳男性)は年頭より血尿があり、1年ほど前からあった腹部の圧迫感が強度になったために、Y医療...

2017年2月10日
選択の視点【No.328、329】

今回は、術後管理について病院側の責任が認められた事案を2件ご紹介いたします。 No.328の事案では、遺族は、執刀医が患者の膵実質もしくは膵内胆管を傷つけたとも主張しましたが、裁判所は、これを認めるに足る証拠はないとし、さらに、執刀医が膵の表面を傷つけた事実は認められるが、本件のような胆石、総胆管結...

2017年2月10日
No.329 「全身麻酔の下、腰椎椎弓切除術を受けた患者が麻酔薬の作用遷延から低換気状態になり、低酸素脳症を発症。病院医師らに術後管理の過失を認めた地裁判決」

宮崎地方裁判所平成26年7月2日判決 判例時報2238号79頁 (争点) X1が低酸素脳症を発生した機序 午後4時30分時点におけるY2医師の過失の有無 午後5時5分時点におけるY3医師の過失の有無 (事案) X1(手術当時80歳で体重46kgの女性)は、医療法人Y1の経営する病院(以下、Y病院とい...

2017年2月10日
No.328 「手術後、胆汁性腹膜炎などの胆石症術後合併症を発症して患者が死亡。手術後の排出液の誘導が不十分だった病院に術後管理の瑕疵があるとして遺族への損害賠償を命じた地裁判決」

浦和(現さいたま)地方裁判所川越支部平成元年1月19日判決判例時報1318号99頁 (争点) 術後管理の瑕疵の有無 (事案) 昭和50年10月28日、A(大正6年生まれの女性)は、右心窩部に痛みを感じたため、医療法人であるYの経営する病院(以下、Y病院という。)の整形外科に来院し、同年11月19日、...

2017年1月23日
選択の視点【No.326、327】

今回は、病院側の説明義務違反が認められた高裁判決を2件ご紹介いたします。紹介にあたっては、それぞれの一審判決も参考にしました。 No.326の事案では、手術の危険性や死亡率の説明の有無につき、一審と控訴審で判断が分かれました。看護記録に「危険率は1割」との記載がある点についても、一審は、それが足の障...

2017年1月23日
No.327 「激しい息切れのため入院した患者が退院後、DICを発症して再入院し、転院先で多臓器不全等により死亡。病院長に退院時の説明義務違反があるとして、病院側に損害賠償を命じた高裁判決」

大阪高等裁判所平成27年11月11日判決 判例時報2304号54頁 (争点) 患者退院時における院長の説明義務違反の有無 (事案) 患者A(昭和31年生で、柔道整復師として自宅に併設する接骨院を経営していた男性)は、遅くとも平成18年頃から、高血圧と糖尿病の治療(血液検査を含む。)を受けるために近隣...

2017年1月23日
No.326 「患者が下部胸部腹部大動脈置換術、分枝再建術の手術後に死亡。医師に手術の危険性や死亡率についての説明義務違反があったとして、自己決定権侵害に基づく損害賠償を認めた高裁判決(遺族の請求を棄却した地裁判決を一部変更)」

東京高等裁判所平成13年7月18日判決判例タイムズ1120号235頁 (争点) 説明義務違反の有無 損害額 (事案) 昭和62年9月、A(男性)はS総合病院において、解離性大動脈瘤と診断されたが、症状が落ち着いていたので、経過観察をしていた。 翌63年、Aは、K病院において、ギランバレー症候群と診断...

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