医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2014年12月12日
No.277「産院で新生児が取り違えられ、約57年経過後にDNA鑑定により取り違えが判明。消滅時効はDNA鑑定の結果が示されたときが起算点になるとして、病院側の分娩助産契約の不履行による損害賠償責任が認められた地裁判決」

東京地方裁判所 平成25年11月26日判決 判例時報2221号62頁 (争点) Yの債務不履行責任の有無 X1の逸失利益について 消滅時効が完成しているか否か   (事案) A子はA男と昭和27年に婚姻し、妊娠したので、昭和28年3月、社会福祉法人である...

2014年12月12日
No.276「都立の産院で新生児の取り違え。出生から約39年後に両親との血液型の不整合が判明し、出生から約46年後にDNA鑑定で両親との親子関係が否定される。血液型の不整合が判明した時点から、取り違えについての債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効が進行するとして、消滅時効の完成を認めず、都の損害賠償責任を認めた高裁判決」

東京高等裁判所 平成18年10月12日判決 判例時報1978号17頁 (争点) 取り違えの事実の有無 分娩助産契約の債務不履行の有無 債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成しているか否か   (事案) X1(妻)は、昭和31年5月15日にX2(...

2014年11月10日
選択の視点【No.274、275】

今回は、帝王切開に関する医師の過失が認められた事案を2件ご紹介します。 No.274では、胎児が母体内で死亡しました。両親は、胎児が38週に達し、母体外で生存可能な状態にまで成長しており、出産が目前であったのであるから、出生後死亡した場合と同様に逸失利益の損害賠償請求権を認めるべきで、両親がそ...

2014年11月10日
No.275「帝王切開により出生した新生児に脳性麻痺の後遺症障害。担当医師および看護師が胎児の状態に即した継続監視を怠った過失があったとして、医療法人に損害賠償を命じた地裁判決」

福井地方裁判所 平成15年9月24日判決 判例タイムズ1188号290頁 (争点) Y病院の医師らの注意義務違反の有無   (事案) X1はX2(母親)とX3(父親)との間に生まれた子であり、Yは病院(以下、Y病院という)を開設している医療法人である。 X2は、妊娠後、住所...

2014年11月10日
No.274「妊婦の母体内で38週に達した胎児が死亡。産婦人科医師に、帝王切開によって胎児を娩出させる注意義務を怠った過失があったとして、妊婦に対する損害賠償責任を認めた地裁判決」

広島地方裁判所平成2年3月22日判決 判例タイムズ 730号218頁 (争点) 産婦人科医師の過失の有無 因果関係 損害   (事案) 患者X1は昭和57年3月ころまでの間に二子を正常分娩したほか、自然流産1回、人工妊娠中絶1回の経験がある女性で、X2は...

2014年10月10日
選択の視点【No.272、273】

今回は麻酔医の過失が認められた判決を2件ご紹介します。 No.272の紹介にあたっては、一審判決(神戸地方裁判所平成9年11月5日判決・判例時報1656号117頁)も参照しました。 No.272の一審では、いわゆる協力医師(医療過誤訴訟で原告患者側の立場で組織的あるいは個別的に支援する)が患...

2014年10月10日
No.273「胃切除手術の麻酔を行う際、麻酔担当医が、麻酔チューブを気管内ではなく食道内に誤挿管し、患者は低酸素血症による心不全で死亡。病院側に損害賠償を命じた地裁判決」

横浜地方裁判所小田原支部 平成14年4月9日判決 判例タイムズ1175号258頁 (争点) Aの死亡について、Y2医師およびO医師に過失があるか   (事案) 医療法人であるY1は、は、診療科目として内科、小児科、外科、小児外科、整形外科、脳神経外科、産婦人科、皮膚泌尿器科、...

2014年10月10日
No.272「1歳11ヶ月男児患者への先天性ヘルニアの根治手術で麻酔薬の過剰投与により心停止が起こり死亡。麻酔医に不法行為責任を、開業医(執刀医)に債務不履行責任を認めた高裁判決」

大阪高等裁判所 平成10年9月10日判決 判例時報 1689号84頁 (争点) 患者の手術について麻酔担当医に過失はあったか 患者及び患者両親の損害   (事案) 患者A(男児、手術時1歳11ヶ月)は、昭和60年7月15日、Y1医師(B外科の名称で医院を経営する...

2014年9月10日
選択の視点【No.270、271】

今回は、注射針刺入行為の過失が認定された裁判例を2件ご紹介します。 No.270の事案では、病院側は、 「仮に問題となった注射行為によって患者の橈骨神経の分枝の損傷が生じ、末梢部の知覚異常がみられることはあっても、一過性のものであり、固定的に末梢部以外の手指の運動機能障害が生じることは考えら...

2014年9月10日
No.271「社内定期健康診断の採血時に、保健師が、従業員の右腕正中神経を損傷し、カウザルギーないしRSDを発症。保健師の過失を認め、保健師と会社に対する損害賠償請求及び会社に対する障害付加補償金請求を認めたが、損害発生についての従業員自身の寄与を認めて、一審判決よりも損害賠償額を減額した高裁判決」

高松高等裁判所 平成15年3月14日判決 判例タイムズ1150号238頁 (争点) Xが本件採血により障害を負ったか否か Xの損害額   (事案) X(昭和29年11月17日生まれ)は、昭和48年4月にA公社(昭和60年に民営化しA株式会社となる)に入社し、平成...

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