医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2016年6月10日
No.312「80代の患者が結腸の切除手術後、高カロリー輸液の投与を受けた際、医師がビタミンB1を補給せず、患者にウェルニッケ脳症が発症したとして、病院側に損害賠償責任が認められた地裁判決」

東京地方裁判所 平成14年1月16日判決 判例タイムズ1114号250頁 (争点) Aに対しビタミンB1を補給せずに高カロリー輸液を投与したことについての過失の有無 (事案) A(入院当時81歳の男性・本件訴訟中に死亡)は、平成8年6月ころから、腹部の膨満や腹痛を訴えるようになり、同年8月20日から...

2016年5月10日
選択の視点【No.310、311】

今回は、誤嚥に関して病院側の責任が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.310の事案では、死亡した4歳の女児の逸失利益を算定するにあたり、裁判所は、(女性労働者の平均賃金ではなく)男女を合わせた全労働者の平均賃金を用いるのが相当であると判示しました。 その理由として、裁判所は、今日女子の社会的...

2016年5月10日
No.311「入院中の高齢者が義歯を装着しないまま病院食であるおにぎりを誤嚥し、その後死亡。担当看護師に見守りに関する過失があったとして県立病院側に責任を認めた地裁判決」

福岡地方裁判所平成19年6月26日判決 (争点) Y2の見守りに関する過失の有無 (事案) A(当時80歳の男性)は、老人性認知症、前立腺肥大、高血圧、高尿酸血症の既往症を有し、平成12年3月10日から介護老人保健施設であるB荘に入所していたが、食欲不振および発熱のため、平成15年10月30日、Y1...

2016年5月10日
No.310「伝染性単核症で入院中の4歳の女児が、病院食であるバナナを誤嚥して死亡。医師らに誤嚥および救命措置に関する過失があるとして、遺族の請求を一部認容した地裁判決」

東京地方裁判所平成13年5月30日判決 判例タイムズ1086号253頁 (争点) 誤嚥についての過失の有無 救命措置についての過失の有無 (事案) 平成9年4月1日、A(4歳の女児)は、鼻水を出し、風邪のような症状を来したので、Aの母親であるX1は、AをかかりつけのBクリニックに連れて行き、診察を受...

2016年4月10日
選択の視点【No.308、309】

今回は眼科の手術に関し医師の過失が認められた判決を2件ご紹介いたします。 No.308の事案では、患者に後遺障害が発生しており、裁判所は、通常ならば労働能力を27%喪失したものとして逸失利益を算出するのが相当であるが、会社社長であった患者が、手術後も社長退任までは、報酬(年額2700万円)を減額され...

2016年4月10日
No.309「イントラレーシック手術を受けた患者の右眼角膜が損傷。医師にスパーテルを誤った位置へ侵入させた注意義務違反を認め、損害賠償を命じた地裁判決」

東京地方裁判所平成23年10月6日判決 判例タイムズ1409号391頁 (争点) Yの注意義務違反の有無 (事案) X(手術当時35歳の男性・会社役員)は、両眼とも近視性乱視(両眼の裸眼視力がそれぞれ0.3)であったことから、イントラレーシックによる屈折矯正手術に関心を持ち、平成17年7月4日、医師...

2016年4月10日
No.308「大学病院での黄斑上膜手術等の後、患者の視力が低下。担当医の術中の過失を認め、角膜移植手術や再手術の際の個室費用および手術後に生じた頭痛に対する鍼灸等の治療費等も損害として大学側に賠償を命じた地裁判決」

東京地方裁判所平成18年7月28日判決 判例タイムズ1253号222頁 (争点) Y病院担当医師の過失の有無 Xの症状とYの過失との因果関係の有無 Xの損害額 (事案) 平成4年ころから、X(昭和12年生まれの男性・手術当時年商約530億円の株式会社の代表取締役社長)は、左眼の視界のゆがみを感じるよ...

2016年3月10日
選択の視点【No.306、307】

今回は、手術手技に関して医師の過失が認められた判決を2件ご紹介します。 No.306の事案では、脾臓の摘出による労働能力の喪失率につき、裁判所は、脾臓の摘出により、細胞性免疫及び液性免疫のいずれもが低下し、脾摘後敗血症、脾摘後発熱、一過的な血栓塞栓症などの障害が発生しうること、脾臓喪失は、自賠法施行...

2016年3月10日
No.307「胃全摘出術の際の術中所見により、肝臓の切除も行われた胃癌患者が術後急性肝不全により死亡。医師の器具操作及び止血方法の過失を認めた地裁判決」

福岡地方裁判所小倉支部平成14年5月21日判決 判例タイムズ1141号219頁 (争点) 執刀医の器具操作及び止血方法の過失の有無 (事案) 患者A(死亡当時53歳の主婦)は、平成7年1月ころから胸痛や固形物が飲み込みにくいことを自覚していたが、これを放置していたところ、4月になると食事摂取時に空気...

2016年3月10日
No.306「食道アカラシア手術で患者の脾臓が損傷。県立病院の医師に手術手技上の過失を認めた地裁判決」

広島地方裁判所平成12年1月19日判決 判例タイムズ1077号260頁 (争点) 脾臓を損傷した過失の有無 縫合不全を起こした過失の有無 (事案) 患者X(男性・平成4年の手術当時62歳のタクシー運転手)は、昭和31年ころ、食道アカラシア(下部食道噴門部の弛緩不全による食道の通過障害や食道の異常拡張...

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