医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2015年3月10日
選択の視点【No.282、283】

今回は、妊婦に対する薬剤投与により、生まれた子に障害が発生した事案に関して、医師の過失が認められた判決を2件ご紹介します。 No.282の事案では、一審判決(松山地方裁判所平成4年9月25日判決・判例タイムズ815号205頁)も参考にしました。また、「看護婦」という判決上の表記を「看護師」に直...

2015年3月10日
No.283「子宮頸管熟化不全の治療薬であるマイリスの投与を受けた妊婦がショック症状に陥り、過強陣痛が発生。出生した子が重篤な無酸素性脳症等に罹患して5歳7ヶ月で死亡。マイリス投与に関する医師の過失を認定し、病院側に損害賠償を命じた地裁判決」

佐賀地方裁判所 平成12年8月25日判決 判例タイムズ1106号202頁 (争点) マイリスの適応を誤った過失の有無 アレルギーが疑われる薬剤を再度投与した過失の有無 マイリスの投与に際して説明義務を怠った過失の有無 マイリスの投与方法を誤った過失の有無 &n...

2015年3月10日
No.282「分娩中の妊婦の子宮破裂により、娩出された女児が重度の脳障害を負い、その後死亡。子宮収縮剤オキシトシンの投与に関する医師の注意義務違反を認めた控訴審判決」

高松高等裁判所 平成8年3月28日判決 判例タイムズ927号178頁 (争点) Y医師の義務違反の有無   (事案) X1(昭和27年生・女性)は、X2と婚姻し、昭和51年7月に長男(3800グラム)、昭和54年7月に次男(3560グラム)を経膣分娩により出産した。 X1は...

2015年2月10日
選択の視点【No.280、281】

今回は先天性異常の可能性に関する出生前の検査について、医師の責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。 両事案とも、先天性異常の可能性を理由に人工妊娠中絶が行われている社会的事実・実態があるとしても、人工妊娠中絶を行うかどうかは、倫理・道徳にかかわる事柄であるという趣旨を述べ、検査に関する医...

2015年2月10日
No.281「羊水検査の結果報告に誤りがあったため、中絶の機会を奪われてダウン症児を出産。児は短期間で死亡。両親が中絶をするかしないかの選択の機会や出生に対する準備の機会が奪われたこと等に対する慰謝料の支払いを医師側に命じた地裁判決」

函館地方裁判所 平成26年6月5日判決 判例時報2227号104頁 (争点) 羊水検査結果の誤報告とAの出生との間の相当因果関係 羊水検査結果の誤報告によるAの出生とダウン症に起因した疾患によるA死亡との間の相当因果関係 父母の損害   (事案) X1及...

2015年2月10日
No.280「産婦人科医師が風疹に罹患した疑いのある妊婦につき予定していた4回目のHI検査を実施せず、妊婦が先天性風疹症候群児を出生。両親の自己決定の利益が侵害されたとして産婦人科医師の損害賠償責任を認めた地裁判決」

東京地方裁判所 平成4年7月8日判決 判例時報1468号116頁   (争点) Y医師の債務不履行又は注意義務違背の有無 損害賠償義務の範囲   (事案) 昭和62年1月下旬頃、妻X1と夫(X2)との間の長男B(当時三歳)が風疹に罹患したが、その後、...

2015年1月16日
選択の視点【No.278、279】

今回は、医薬品の添付文書(能書)関する判決を2件ご紹介します。 No.278の判決紹介にあたっては、一審(名古屋地裁昭和60年5月17日判決・ウエストロー)と控訴審(名古屋高裁平成3年10月31日判決・ウエストロー)の判決も参考にしました。 No.278の判決では、麻酔剤の能書きの記載と異な...

2015年1月16日
No.279「抗がん剤であるイレッサについて、添付文書の記載における指示・警告上の欠陥等があったとはいえないとして、これを輸入販売した製薬会社の責任を否定した最高裁判決」

最高裁判所第三小法廷 平成25年4月12日判決 判例タイムズ1390号146頁 (争点) イレッサの添付文書第1版の副作用の記載についての指示・警告上の欠陥の有無   (事案) Yは英国の製薬企業であるZ社を親会社とする製薬会社(資本金20億円)である。平成14年1月、Yは、...

2015年1月16日
No.278「医師が、麻酔剤の能書に記載された注意事項に従わず、医療慣行に基づき血圧測定を行った結果、患者に脳機能低下症が発症した事案において、医療慣行に従ったからといって医療水準に基づいた注意義務を尽くしたということはできないとして医師の過失を認め、破棄差戻をした最高裁判決」

最高裁判所第三小法廷 平成8年1月23日判決 判例タイムズ 914号106頁 (争点) Y2医師の過失の有無 Y2医師の過失と患者X1の脳機能低下症発症との因果関係   (事案) 患者X1(昭和42年4月10日生、手術当時7歳)は、昭和49年9月25日午前0時3...

2014年12月12日
選択の視点【No.276、277】

今回は、新生児の取り違えに関して、病院の債務不履行責任が認められた判決を2件ご紹介します。 どちらの事案も、出生から数十年経過しての提訴であり、消滅時効(権利を行使することができる時から10年)が完成しているかどうかが主な争点となりました。 紹介にあたっては、掲載雑誌である判例時報の解説も参...

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