医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2016年12月12日
選択の視点【No.324、325】

今回は、歯科医師による手術の際の過失が認められた事案を2件ご紹介します。 No.324の事案では、患者は損害賠償請求権と手術費用等請求権とを相殺し、さらに手術費用のうち、「インプサイナスリフト」として計上されている7万円と「全身麻酔法加算」として計上されている6万円は、正常な治療に基づいて発生した費...

2016年12月12日
No.325 「下顎骨を削合して埋状智歯を抜歯する手術において、歯科医師の過失または注意義務違反により患者の左舌神経を損傷し、舌左側に麻痺感や知覚鈍麻の症状が残存。後遺障害等級表第14級9号(局部に神経症状を残すもの)の後遺障害に当たるとして、慰謝料、逸失利益等の損害を認めた地裁判決」

東京地方裁判所平成26年11月6日判決 判例タイムズ1424号311頁 (争点) 後遺障害の程度 後遺障害逸失利益の有無 (事案) 患者X(当時21歳、女性)は、平成21年9月11日、左下奥歯の痛みを主訴として、Y医療法人が開設するY歯科クリニック(以下、Yクリニック)を受診した。Yクリニックの歯科...

2016年12月12日
No 324 「インプラント手術後、患者に知覚障害が生じ、下歯槽神経麻痺との診断。大学歯科病院の歯科医師に、下顎枝からの骨採取を行う際、切削器具を下顎管に到達しないよう慎重に操作すべき注意義務違反を認めた地裁判決」

東京地方裁判所平成26年8月21日判決判例タイムズ1415号260頁 (争点) 右下顎枝から骨採取を行った際の注意義務違反の有無 (事案) X(昭和24年11月生まれの女性)は、当時受診していた歯科医師から、Y学校法人が設置・運営するY大学歯科病院(以下、Y病院とする。)を紹介された。 平成12年1...

2016年11月10日
選択の視点【No.322、323】

今回は、うつ伏せ寝をしていた乳幼児が窒息死し、施設側の責任が認められた事案を2件ご紹介します。医療機関での事故ではありませんが、同様のリスクを医療機関も抱えており、死因の認定や注意義務違反の検討などにつき医療機関においても参考になる事例と思われます。 No.322の事案では、施設側は、死因はSIDS...

2016年11月10日
No.323「認可外保育施設で午睡中乳幼児が死亡。担当保育士の過失による急性の窒息死だとして、保育園経営者らに責任を認めた高裁判決」

仙台高等裁判所平成27年12月9日判決 判例時報2296号86頁 (争点) 乳幼児の死因 担当保育士の過失の有無 保育園経営者らの過失の有無 (事案) 平成21年秋から、Xらの長女A(事件当時1歳)は、有限会社Y1の運営する保育施設(認可外保育施設、以下「本件施設」という)において、ならし保育を受け...

2016年11月10日
No.322「認可外保育施設において、うつ伏せ寝をしていた乳児が死亡。死因をSIDS(乳幼児突然死症候群)と認定して遺族の損害賠償請求を棄却した地裁判決を変更して、死因は鼻口閉塞による窒息死であり、施設側に過失があるとして、遺族への損害賠償を命じた高裁判決」

大阪高等裁判所平成27年11月25日判決 判例時報2297号58頁 (争点) 乳児の死因 保育従事者の過失の有無 本件施設の実質的経営者、本件施設の園長及び設置者の過失の有無 (事案) X1とX2は、平成21年11月初め頃のお試し保育を経て、X1らの子であるA(当時生後4か月)とB(Aの姉)について...

2016年10月 5日
選択の視点【No.320、321】

今回は、患者が死亡した事案で、診察時の医師の診断に過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.320の事案では、患者遺族は、転院先の医師についても、投与した輸液及び膵酵素阻害剤が不十分であった点、特に持続的動注治療法及び腹腔内投与法の処置をとらなかった点で過失があると主張しました。しかし、裁判...

2016年10月 5日
No.321 「診察後にケアホームに帰宅した患者が汎発性腹膜炎を発症し、敗血症により死亡。診察にあたった一般内科医が、消化管穿孔を疑い輸液等により循環状態を安定させた上で、高次医療機関に転医させるなどの注意義務を怠ったとして、病院側の責任を認めた地裁判決」

大阪地方裁判所平成27年5月26日判決 医療判例解説第62号103頁 (争点) 一般内科医であるY2医師が、その当時知り得た情報を前提に、本件X線写真から小腸拡張及び遊離ガス像を読み取れるか Y2医師の注意義務違反とAの死亡との相当因果関係の有無 (事案) 患者A(死亡時59歳の男性)は、統合失調症...

2016年10月 5日
No.320 「医師が患者の急性膵炎を急性胆嚢炎と診断したため、輸液と膵酵素阻害剤の投与が不足し、転院後に患者が死亡。転院前の医師の過失を認め、損害賠償を命じた地裁判決」

山口地方裁判所岩国支部平成12年10月26日判決 判例時報1753号108頁 (争点) 患者の死亡原因 転院前のクリニックの医師が急性膵炎ではなく急性胆嚢炎と診断した過失の有無 (事案) 患者A(昭和5年生まれの男性)は、平成6年7月17日午前6時頃、突然腹痛を覚え、同日午前9時頃にB医院で診察を受...

2016年9月 5日
選択の視点【No.318、319】

今回は、ERCP検査後に患者が急性膵炎を発症して死亡したことにつき、病院側の責任が認められた事案を2件ご紹介します。 No.318の事案では、患者遺族は、ERCP検査における手技上の過誤も主張しました。この点につき、裁判所は、患者について膵臓の疾患の疑いが全くなく、総胆管の造影を目的とした本件ERC...

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