医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2015年12月10日
選択の視点【No.300、301】

今回は、S状結腸の手術に関する医師の過失が争点となった裁判例を2件ご紹介します。 なお、判決文では、「S字」結腸という用語が使われている箇所もありますが、紹介上での表記は「S状」結腸に統一しています。  No.300の事案では、病院側は、ポリペクトミー手術が、穿孔を誘発したことは争わないが、腸内ガス...

2015年12月10日
No.301「県立病院で、腹腔鏡補助下S状結腸切除術を受けた患者が、急性汎発性腹膜炎を発症し、死亡。患者に腹膜刺激症状が見られなかったこと等から、担当医師らに緊急手術を実施すべき注意義務はなかった等として、病院側の責任を否定した地裁判決」

新潟地方裁判所長岡支部 平成22年10月27日判決 判例タイムズ1341号173頁 (争点) Aの直接死因である敗血症の原因は、本件手術の吻合部の縫合不全による急性汎発性腹膜炎であったか否か 6月18日には、Aに縫合不全による急性限局性腹膜炎を疑うべき所見が現れたのに、同日の段階で再手術などの適切な...

2015年12月10日
No.300「S状結腸のポリープ摘出手術後、手術部位に生じた穿孔により腹膜炎が発症。医師に手術後の療養方法の指導、説明義務を怠った過失を認めた地裁判決」

大阪地方裁判所 平成10年9月22日判決 判例タイムズ1027号230頁 (争点) 医師の説明義務違反の有無 (事案) 患者X(昭和9年3月10日生)は、腹痛のためK胃腸クリニックで治療を受け、薬局で購入した漢方胃腸薬を服用していたが、平成2年11月1日午前5時49分、午前2時ころから持続する腹痛や...

2015年11月10日
選択の視点【No.298、299】

今回は、アレルギーのある患者に対する薬剤投与に関して、病院側の過失を認めた裁判例を2件ご紹介します。 No.298の事案では、医師は、患者がかつて他院で減感作療法を受けていたこと及びその時にはショック症状を呈していなかったことを知っていたことから、閾値を検査して初回投与量及び濃度を決定する必要...

2015年11月10日
No.299「抗生剤の点滴直後にアナフィラキシーショックを発症して患者が死亡。病院側の過失を否定した高裁判決を破棄して差し戻した最高裁判決」

最高裁判所 平成16年9月7日判決 判例タイムズ1169号158頁 (争点) 抗生物質投与後の経過観察をすべき注意義務及び救急処置の準備をすべき注意義務を怠った過失の有無   (事案) 平成2年7月19日、A(当時57歳の男性)は、Y1の開設する病院(以下、Y病院という)にお...

2015年11月10日
No.298「杉花粉アレルギー患者が減感作療法後にショック症状を呈し慢性腎炎に罹患。患者が約8ヶ月前に他院で同療法を受けてショックが出ていなかったとしても、改めて閾値検査を行うべき注意義務及び注射後少なくとも30分間は経過観察をすべき注意義務があるとして、医師の過失を認めた地裁判決」

静岡地方裁判所 平成2年6月29日判決 判例タイムズ736号225頁 (争点) 減感作療法施行時の過失 減感作療法施行後の過失   (事案) 患者X(主婦、受傷当時32歳)は、昭和54年の春先頃からアレルギー鼻炎に悩まされるようになった。昭和56年3月ころ、Xは...

2015年10月10日
選択の視点【No.296、297】

今回は3歳児の患者に対する病院側の責任が認められた事案を2件ご紹介します。 No.296の事案では、患者に対してマウスツーマウスを行わなかった小児科医師が用手人工呼吸法には習熟していたがマウスツーマウスには不慣れであった点につき、裁判所は、いくつかの医療技法が併存する場合、そのいずれかの手法を...

2015年10月10日
No.297「悪性腫瘍で大学病院に入院中の3歳5か月の患者がベッドから転落し頭部を打ち、頭蓋内出血を引き起こし、4ヶ月後に死亡。看護師によるベッドの安全柵の確認が不十分であったとして、担当看護師と学校法人に損害賠償を命じた地裁判決」

宇都宮地方裁判所 平成6年9月28日判決 判例時報1536号93頁 (争点) 看護師Y1の過失 本件事故と患者Aの死亡との因果関係   (事案) 患者A(事故当時3歳5か月の男児)は、昭和63年4月5日、上腹部悪性腫瘍(神経芽細胞腫)で学校法人Y大学が開設するY...

2015年10月10日
No.296「気管支喘息の中程度の発作を起こし、心・呼吸停止に陥った3歳の患者に対して、市立病院の医師らが直ちにマウスツーマウスを実施しなかったことにつき、市の債務不履行責任を認めた高裁判決」

札幌高等裁判所 平成6年1月27日判決 判例時報1522号78頁 (争点) 蘇生措置につき注意義務違反が認められるか否か   (事案) X(当時3歳の男児)は、Y市の経営する病院(以下、Y病院という。)において、昭和55年4月10日から昭和56年1月9日までの間に7回、同年9...

2015年9月10日
選択の視点【No.294、295】

今回は、PTCAにおけるガイドワイヤーにより損傷した際の出血を見落とした医師の過失により、病院側に損害賠償が命じられた事案(No.294)と、カテーテルの挿入・留置について医師の過失はあるものの、不法行為責任は否定されて、遺族が敗訴した事案(No.295)をご紹介します。 No.294の事案で...

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