医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2022年3月 9日
選択の視点【No.450、451】

今回はX線(レントゲン)検査について読影した医師の過失の有無や損害が争点となった裁判例を2件ご紹介します No.450の事案では、第二次判定医が「要経過観察1年後」と診断した根拠の一つとして、「陰影が石灰化による像であろうと考えたが、写真撮影の限界もあるので断定を避けた」との主張がされましたが、裁判...

2022年3月 9日
No.451「レントゲン検査の写真から医師が右大腿骨頸部骨折を読影できず、骨接合術が行われなかった。その後患者は人工股関節置換手術に至る。医師に骨折を発見しなかった過失を認め、一定の範囲で損害賠償を命じた地裁判決」

東京地方裁判所令和2年3月26日判決 医療判例解説93号103頁  (争点) 初診時に右大腿骨頸部骨折を発見しなかった医師の過失と相当因果関係のある損害 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 平成27年12月20日、◇(診察当時51歳の女性)は、犬の散歩中に転倒し、右大腿骨頸部を骨折し、...

2022年3月 9日
No.450「肺癌で死亡した患者につき、定期健康診断の胸部エックス線写真を読影した医師の過失が認められた地裁判決」

奈良地方裁判所平成15年9月26日判決 判例タイムズ1187号288頁 (争点) 平成7年、8年の各健康診断で撮影された胸部エックス線間接撮影写真につき、担当医が肺癌等の異常を疑う所見を見落として精密検査を勧めなかった過失の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(会社勤務の男性)...

2022年2月10日
選択の視点【No.448、449】

今回は死亡した患者について、必要な検査をしなかった医師の過失が認められた事案を2件ご紹介します。 No.448の事案(胃潰瘍を疑った検査の懈怠)では、病院側は、患者の腹部の経過は順調であったが肺気腫による慢性呼吸器障害に、再発肺がんが両肺に転移播種し、呼吸不全が継続、悪化し死亡に至ったと主張しました...

2022年2月10日
No.449「肺がんの手術の既往歴のある患者が肺アスペルギルス症を発症して死亡。医師が呼吸器感染症の病原菌を特定するための検査を行わなかったとして、病院側の過失を認めた地裁判決」

さいたま地方裁判所平成13年9月26日判決 判例タイムズ1183  号306頁   (争点) 医師の注意義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(平成9年の死亡当時60歳の男性)には、昭和62年11月にB医大病院において肺がん手術を受け、左肺上葉を切除した既往歴があった。...

2022年2月10日
No.448「肺がんの手術後肺気腫に罹患した患者が胃潰瘍を悪化させ、穿孔による急性腹膜炎を発症し緊急開腹手術後に死亡。医師に胃潰瘍の存在を疑い検査をしてこれを発見し適切な薬物療法を行うべき注意義務違反を認めた地裁判決」

大阪地方裁判所平成10年2月16日判決 判例時報1666号102頁 (争点) 胃潰瘍の存在を疑い検査をしてこれを発見し、適切な薬物療法を行うべき注意義務の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和63年の死亡当時67歳の男性)は肺気腫の既往症があり、かかりつけ医の紹介により、医...

2022年1月 7日
選択の視点【No.446、447】

今回は医師の説明義務違反が認められた判決を2件ご紹介します。 No.446の事案紹介にあたっては、一審判決(仙台地裁昭和61年4月10日判決・判例タイムズ616号122頁)も参照しました。 No.446の事案では、裁判所は重大な危険性を伴う手術における医師の説明義務について次のように述べました。 「...

2022年1月 7日
No.447「膵頭十二指腸切除術を受けた患者が、縫合不全に起因する多臓器不全発生のため、死亡。病院側に説明義務違反を認めた事案」

大阪地方裁判所平成10年12月18日判決 判例タイムズ1021号201頁 (争点) 術前の説明義務違反の有無 術後の経過観察義務違反、縫合不全の早期発見義務違反、縫合不全に対する適切な治療義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(手術当時68歳の男性)は、平成元年5月上旬...

2022年1月 7日
No.446「椎間板ヘルニアの患者を脊髄腫瘍と判断して手術をしたが、術後、患者が下半身麻痺に。国立病院医師が椎弓切除手術の高度な危険性を説明せず、患者の決断・選択の機会を侵害し、自己決定権を奪ったとして国に損害賠償を命じた高裁判決」

仙台高等裁判所平成6年12月15日判決 判例タイムズ886号248頁 (争点) 診断上の過誤の有無 手術方法選択上の過誤の有無 手術中止義務の懈怠の有無 説明義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 昭和49年、◇1(事件当時35歳の男性)は下肢の異常を感じ、国である△の開設...

2021年12月10日
選択の視点【No.444、445】

今回は、手術後の縫合不全に対する術後管理上の過失から患者が死亡し、病院側の損害賠償責任が認められた事案を2件ご紹介します。 No.444の事案では、病院側は十二指腸盲端部の縫合不全を否定しました。 しかし、裁判所は、患者の解剖の結果によっても、十二指腸盲端部に糸のほつれといった明らかな縫合不全は認め...

ページの先頭へ