医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2022年2月10日
No.448「肺がんの手術後肺気腫に罹患した患者が胃潰瘍を悪化させ、穿孔による急性腹膜炎を発症し緊急開腹手術後に死亡。医師に胃潰瘍の存在を疑い検査をしてこれを発見し適切な薬物療法を行うべき注意義務違反を認めた地裁判決」

大阪地方裁判所平成10年2月16日判決 判例時報1666号102頁 (争点) 胃潰瘍の存在を疑い検査をしてこれを発見し、適切な薬物療法を行うべき注意義務の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和63年の死亡当時67歳の男性)は肺気腫の既往症があり、かかりつけ医の紹介により、医...

2022年1月 7日
選択の視点【No.446、447】

今回は医師の説明義務違反が認められた判決を2件ご紹介します。 No.446の事案紹介にあたっては、一審判決(仙台地裁昭和61年4月10日判決・判例タイムズ616号122頁)も参照しました。 No.446の事案では、裁判所は重大な危険性を伴う手術における医師の説明義務について次のように述べました。 「...

2022年1月 7日
No.447「膵頭十二指腸切除術を受けた患者が、縫合不全に起因する多臓器不全発生のため、死亡。病院側に説明義務違反を認めた事案」

大阪地方裁判所平成10年12月18日判決 判例タイムズ1021号201頁 (争点) 術前の説明義務違反の有無 術後の経過観察義務違反、縫合不全の早期発見義務違反、縫合不全に対する適切な治療義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(手術当時68歳の男性)は、平成元年5月上旬...

2022年1月 7日
No.446「椎間板ヘルニアの患者を脊髄腫瘍と判断して手術をしたが、術後、患者が下半身麻痺に。国立病院医師が椎弓切除手術の高度な危険性を説明せず、患者の決断・選択の機会を侵害し、自己決定権を奪ったとして国に損害賠償を命じた高裁判決」

仙台高等裁判所平成6年12月15日判決 判例タイムズ886号248頁 (争点) 診断上の過誤の有無 手術方法選択上の過誤の有無 手術中止義務の懈怠の有無 説明義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 昭和49年、◇1(事件当時35歳の男性)は下肢の異常を感じ、国である△の開設...

2021年12月10日
選択の視点【No.444、445】

今回は、手術後の縫合不全に対する術後管理上の過失から患者が死亡し、病院側の損害賠償責任が認められた事案を2件ご紹介します。 No.444の事案では、病院側は十二指腸盲端部の縫合不全を否定しました。 しかし、裁判所は、患者の解剖の結果によっても、十二指腸盲端部に糸のほつれといった明らかな縫合不全は認め...

2021年12月10日
No.445「進行胃癌のため胃亜全摘術を受けた患者が、縫合不全により発生した腹腔内膿瘍の縮小が遅延し残胃穿孔が生じ、腹腔内出血を起こして死亡。医師の術後管理上の過失を認めた地裁判決」

広島地方裁判所平成9年5月29日判決 判例タイムズ953号229頁 (争点) 1 縫合不全・腹腔内膿瘍への対策に関する過失 (1) 経口摂取の継続について (2) 留置ドレーンの選択及びドレーンの留置時期について 2 病院の術後管理の過失と患者の死亡との因果関係 ※以下、原告を◇、被告を△と表記す...

2021年12月10日
No.444「胃・十二指腸潰瘍の手術後、患者が汎発性腹膜炎のため死亡。縫合不全による腹膜炎に対する処置を怠った医師の過失を認めた地裁判決」

岐阜地方裁判所大垣支部平成2年7月16日判決 判例時報1368号114頁 (争点) 医師の過失の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 昭和60年9月15日、午前0時過ぎころ、A(当時27歳の男性・鉄道会社勤務)は、上腹部痛のため、△医師が開設する病院(以下、「△病院」という。)を受...

2021年11月11日
選択の視点【No.442、443】

今回は、薬剤の投与に関連して、医師の過失が認められた事案を2件ご紹介いたします。 No.442の判例紹介にあたり、一審判決(広島地裁平成2年10月9日判決・判例タイムズ750号221頁)も参考にしました。 No.442の事案では、一審判決と控訴審判決とで、過失の内容についての裁判所の判断が変わりまし...

2021年11月11日
No.443「手術後せん妄を発症した患者に国立大学病院の研修医がドルミカムを投与し、患者がいわゆる植物状態に陥る。ドルミカムの用法及び用量、投与前における心肺蘇生処置の準備並びに投与後の心肺蘇生処置の実施につき過失を認めた地裁判決」

東京地方裁判所平成16年4月27日判決 判例タイムズ1211号  214頁 (争点) ドルミカムの投与量、投与方法等に関する過失の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇1(平成10年9月当時79歳の男性、中華人民共和国で生まれ、台湾に渡り、昭和27年に来日し、日本での永住許可を受...

2021年11月11日
No.442「酸性鎮痛剤(ボルタレン)によるアナフィラキシーショックにより、入院患者が死亡。アスピリン喘息の疑いのある患者に対して安易に酸性解熱鎮痛剤を投与した医師の過失を認めた高裁判決」

広島高等裁判所平成4年3月26日判決 判例タイムズ786号221頁 (争点) ボルタレン使用についての注意義務違反の有無 ※以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和15年生。死亡当時42歳の女性)は、昭和54年春ころより痰を伴う咳が出現し、特に呼吸困難を伴うようになったため、同年12...

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