医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2015年1月16日
No.279「抗がん剤であるイレッサについて、添付文書の記載における指示・警告上の欠陥等があったとはいえないとして、これを輸入販売した製薬会社の責任を否定した最高裁判決」

最高裁判所第三小法廷 平成25年4月12日判決 判例タイムズ1390号146頁 (争点) イレッサの添付文書第1版の副作用の記載についての指示・警告上の欠陥の有無   (事案) Yは英国の製薬企業であるZ社を親会社とする製薬会社(資本金20億円)である。平成14年1月、Yは、...

2015年1月16日
No.278「医師が、麻酔剤の能書に記載された注意事項に従わず、医療慣行に基づき血圧測定を行った結果、患者に脳機能低下症が発症した事案において、医療慣行に従ったからといって医療水準に基づいた注意義務を尽くしたということはできないとして医師の過失を認め、破棄差戻をした最高裁判決」

最高裁判所第三小法廷 平成8年1月23日判決 判例タイムズ 914号106頁 (争点) Y2医師の過失の有無 Y2医師の過失と患者X1の脳機能低下症発症との因果関係   (事案) 患者X1(昭和42年4月10日生、手術当時7歳)は、昭和49年9月25日午前0時3...

2014年12月12日
選択の視点【No.276、277】

今回は、新生児の取り違えに関して、病院の債務不履行責任が認められた判決を2件ご紹介します。 どちらの事案も、出生から数十年経過しての提訴であり、消滅時効(権利を行使することができる時から10年)が完成しているかどうかが主な争点となりました。 紹介にあたっては、掲載雑誌である判例時報の解説も参...

2014年12月12日
No.277「産院で新生児が取り違えられ、約57年経過後にDNA鑑定により取り違えが判明。消滅時効はDNA鑑定の結果が示されたときが起算点になるとして、病院側の分娩助産契約の不履行による損害賠償責任が認められた地裁判決」

東京地方裁判所 平成25年11月26日判決 判例時報2221号62頁 (争点) Yの債務不履行責任の有無 X1の逸失利益について 消滅時効が完成しているか否か   (事案) A子はA男と昭和27年に婚姻し、妊娠したので、昭和28年3月、社会福祉法人である...

2014年12月12日
No.276「都立の産院で新生児の取り違え。出生から約39年後に両親との血液型の不整合が判明し、出生から約46年後にDNA鑑定で両親との親子関係が否定される。血液型の不整合が判明した時点から、取り違えについての債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効が進行するとして、消滅時効の完成を認めず、都の損害賠償責任を認めた高裁判決」

東京高等裁判所 平成18年10月12日判決 判例時報1978号17頁 (争点) 取り違えの事実の有無 分娩助産契約の債務不履行の有無 債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成しているか否か   (事案) X1(妻)は、昭和31年5月15日にX2(...

2014年11月10日
選択の視点【No.274、275】

今回は、帝王切開に関する医師の過失が認められた事案を2件ご紹介します。 No.274では、胎児が母体内で死亡しました。両親は、胎児が38週に達し、母体外で生存可能な状態にまで成長しており、出産が目前であったのであるから、出生後死亡した場合と同様に逸失利益の損害賠償請求権を認めるべきで、両親がそ...

2014年11月10日
No.275「帝王切開により出生した新生児に脳性麻痺の後遺症障害。担当医師および看護師が胎児の状態に即した継続監視を怠った過失があったとして、医療法人に損害賠償を命じた地裁判決」

福井地方裁判所 平成15年9月24日判決 判例タイムズ1188号290頁 (争点) Y病院の医師らの注意義務違反の有無   (事案) X1はX2(母親)とX3(父親)との間に生まれた子であり、Yは病院(以下、Y病院という)を開設している医療法人である。 X2は、妊娠後、住所...

2014年11月10日
No.274「妊婦の母体内で38週に達した胎児が死亡。産婦人科医師に、帝王切開によって胎児を娩出させる注意義務を怠った過失があったとして、妊婦に対する損害賠償責任を認めた地裁判決」

広島地方裁判所平成2年3月22日判決 判例タイムズ 730号218頁 (争点) 産婦人科医師の過失の有無 因果関係 損害   (事案) 患者X1は昭和57年3月ころまでの間に二子を正常分娩したほか、自然流産1回、人工妊娠中絶1回の経験がある女性で、X2は...

2014年10月10日
選択の視点【No.272、273】

今回は麻酔医の過失が認められた判決を2件ご紹介します。 No.272の紹介にあたっては、一審判決(神戸地方裁判所平成9年11月5日判決・判例時報1656号117頁)も参照しました。 No.272の一審では、いわゆる協力医師(医療過誤訴訟で原告患者側の立場で組織的あるいは個別的に支援する)が患...

2014年10月10日
No.273「胃切除手術の麻酔を行う際、麻酔担当医が、麻酔チューブを気管内ではなく食道内に誤挿管し、患者は低酸素血症による心不全で死亡。病院側に損害賠償を命じた地裁判決」

横浜地方裁判所小田原支部 平成14年4月9日判決 判例タイムズ1175号258頁 (争点) Aの死亡について、Y2医師およびO医師に過失があるか   (事案) 医療法人であるY1は、は、診療科目として内科、小児科、外科、小児外科、整形外科、脳神経外科、産婦人科、皮膚泌尿器科、...

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