医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2010年7月 1日
No.171 「後縦靱帯骨化症除去前方除圧術により患者に重篤な後遺障害が発生。手術の除圧幅について、ガイドラインの内容に照らして不適切であると判断し、市立病院の医師の過失を認めて市に損害賠償を命じた地裁判決」

大阪地方裁判所平成21年11月25日 判例タイムズ1320号198頁 (争点) 本件手術の術式選択及び除圧幅について医師に注意義務違反が認められるか (事案) 患者A(昭和2年生まれの男性)は、手がしびれ、握力が低下し、歩行時に右足を引きずるなどの不自由があったことから、平成12年2月15日、Y市が...

2010年7月 1日
No.170 「慢性肺血栓塞栓症の診断・治療により病状が軽快し、転医した患者が、転医先の病院で急性増悪期と診断されて血栓溶解療法を受けたところ、患者が脳内出血で死亡。転医先の病院の診断及び療法に過失を認め、遺族の損害賠償請求を認容した高裁判決」

福岡高裁平成20年6月10日判決 判例時報2023号62頁 (争点) 患者は慢性肺血栓塞栓症の急性増悪期にあったか 血栓溶解療法の適応はあったか 損害(患者に逸失利益はあるか) (事案) 患者A(昭和2年生まれの女性)は、平成7年11月、労作時に呼吸困難を自覚し、B病院において閉塞性肺疾患を原因とし...

2010年6月 7日
選択の視点【No.168、169】

今回は乳幼児医療に関する事案を2件ご紹介します。1件は病院側の責任が認められ、もう1件は否定されました。 病院側の責任を認めたNo.168の事案では、病院側はPVL(脳室周囲白質軟化症)の告知は、しばしば児童虐待に結びつく悲観的な告知であるとの主張もしたようですが、裁判所は、子の成育上の問題は、児童...

2010年6月 7日
No.169 「遅発型GBS感染症(劇症型・敗血症型)に罹患し、重篤な後遺症が残り、約3年後に死亡。新生児を診察した産婦人科医師の処置及び転送義務ついての過失を否定した判決」

前橋地方裁判所平成21年2月27日判決 判例タイムズ1314号267頁 (争点) 午前6時の診察時に、医師が患者に適切な処置を行い、または直ちに専門医に転送すべきであったのにしなかった過失の有無 午前9時の診察時に、医師が患者を直ちに専門医に転送すべきであったのにしなかった過失の有無 (事案) 患者...

2010年6月 7日
No.168 「PVL患児が脳性麻痺による運動障害を発症。PVL罹患について両親に報告・説明をしなかったとして、医師の報告・説明義務違反及び経過観察・治療義務違反を認めた地裁判決」

大阪地裁平成19年10月31日判決 判例タイムズ1263号311頁 (争点) 医師に報告・説明義務違反はあったか 医師に経過観察・治療義務違反はあったか 医師らの過失と損害との間に因果関係はあるか (事案) 患者X1は、両親X2(母)とX3(父)の二女として、出産予定日より約3カ月早い平成16年7月...

2010年5月11日
選択の視点【No.166、167】

今回は病院の患者に対する説明・顛末報告義務が問題となった事案を2件ご紹介します。 No.166の事案は、蕁麻疹の治療に来た患者に対して、医師がそもそも効能・効果のない薬剤の注射を指示し、さらに准看護師が注射すべき薬剤を取り違えるという経過をたどり、患者に重大な後遺症が残りました。この点について裁判所...

2010年5月11日
No.167 「治療により身体障害1級の後遺症が残った患者が診療録等を示しながらの顛末報告を病院に求めたが、病院は報告をしなかった。病院の診療録等に基づいて顛末を報告する義務違反を認め、患者の慰謝料請求を認めた地裁判決」

大阪地裁平成20年2月21日判決 医療判例解説24号16頁 (争点) 病院は患者に対し診療契約上の付随義務として診療録等の開示義務を負うか 病院は患者に対し診療録等に基づいて顛末を報告する義務を負うか 病院に顛末を報告する義務違反があったか (事案) X(男性)は、舌白板症と診断され、平成3年4月2...

2010年5月11日
No.166 「蕁麻疹患者に対する静脈注射を指示した医師が注射の場に立ち会わず、准看護師が薬剤を誤投与し、患者に重篤な後遺症。医師、准看護師の治療上の過失及び病院の調査・報告義務違反を認めて患者と両親に損害賠償を命じた地裁判決」

京都地裁平成17年7月12日判決 判例時報1907号112頁 (争点) 医師と准看護師の医療行為に過失はあったか 病院に事故原因の調査・報告義務違反があったか (事案) X1(事故当時6歳の女児)は、平成13年1月15日、体中に赤い発疹のようなものが出たため、Y1医療法人(以下、Y1法人)の設置する...

2010年4月 5日
選択の視点【No.164、165】

今回は小児科での診察・治療についての過失の有無が争点となった判決を2件ご紹介します。 No.164では、当初の主治医が3月31日(土曜日)に退職し、翌日の4月1日の日曜日から新しい主治医に変わり、4月2日には大学病院への転院が予定されていた事案ですが、裁判所は患者の急速な症状の悪化を踏まえるならば、...

2010年4月 5日
No.165「幼児が転倒した際に割り箸をのどに刺して死亡。医師が頭蓋内損傷を予見することは不可能であったとして、病院側の責任が否定された高裁判決」

東京高等裁判所平成21年4月15日判決 判例時報2054号42頁 (争点) 医師には、割り箸片による頭蓋内損傷を予見することが可能であったか 患者が死亡するに至った経緯・原因について医師らが患者の両親に虚偽の説明を行ったか (事案) 患者A(平成6年10月生、当時4歳9か月)は、平成11年7月10日...

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