医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2010年4月 5日
No.164「結核性髄膜炎に罹患していた女児に重度の脳障害の後遺症が発生。結核性髄膜炎の診断のために必要な検査等を怠ったとして、病院側の損害賠償責任を認めた高裁判決」

福岡高等裁判所平成20年4月22日判決 判例時報2028号41頁 (争点) 結核性髄膜炎の疑いを持って検査を行い治療を開始すべきであったのに、これを怠った過失が医師にあるか 医師の過失と後遺障害との因果経過の有無及び損害額の算定方法 (事案) 患者X(平成8年生まれの女児、当時4歳9ヶ月)は、平成1...

2010年3月 8日
選択の視点【No.162、163】

今回は、終末期医療の適否が問題となり、医師の責任が認定された事案を2件ご紹介します。 No.162は、マスコミでも大きく報道された刑事事件です。紹介にあたっては、一審判決(横浜地方裁判所平成17年3月25日判決・判例タイムズ1185号114頁)及び控訴審判決(東京高等裁判所平成19年2月28日判決・...

2010年3月 8日
No.163「末期癌患者に一般的な医学的知見の裏付けを欠く治療を医師が実施。有効な治療を受けられるという患者の期待権侵害を認め、医師に損害賠償義務を命じた地裁判決」

山口地裁岩国支部平成19年1月12日判決 判例タイムズ1247号310頁 (争点) 医師の債務不履行((1)診断義務違反、(2)治療義務違反、(3)説明義務違反、(4)転医勧告義務違反)の有無 医師の債務不履行と因果関係のある損害 (事案) A(昭和27年生まれの女性)は、平成14年8月26日にB病...

2010年3月 8日
No.162「気管支喘息の重積発作で入院した患者から気管内チューブを抜管し、筋弛緩剤を投与して患者を死亡させた医師が殺人罪で起訴。法律上許容される治療中止に当たらないとした最高裁判決」

最高裁第三小法廷平成21年12月7日決定 裁判所時報1497号8頁 (争点) 医師の気管内チューブの抜管行為は法律上許容される治療中止に当たるか (事案) A(当時58歳)は、平成10年11月2日、仕事帰りの自動車内で気管支喘息の重積発作を起こし、同日午後7時ころ、心肺停止状態でB病院に運び込まれた...

2010年2月18日
選択の視点【No.160、161】

今回は喘息の持病のある患者に関する判決を2件ご紹介します。 No.160の事案では、一審の神戸地方裁判所の判決(判例時報1446号121頁)も参考にしました。一審では必要かつ十分な問診がなされなかったとして、患者遺族の請求が一部認容されましたが、控訴審では問診をしていても患者の症状が急激に悪化する危...

2010年2月18日
No.161「医師が気管支喘息の患者に気管支拡張剤を処方して患者に不整脈が悪化。処方自体についての債務不履行は否定し、薬剤の副作用についての医師の説明義務違反を認めた判決」

札幌地方裁判所平成19年11月21日判決 判例タイムズ1274号214頁 (争点) 医師が気管支拡張剤を処方したことが債務不履行に当たるか 医師が気管支拡張剤の副作用を説明しなかったことについて説明義務違反が認められるか (事案) 患者X(昭和26年生まれの男性)は、心臓の既往症があり、平成9年ころ...

2010年2月18日
No.160「医師が、喘息患者の発作に際し、当該患者がステロイド常用状態にあることに気付かずに交感神経刺激剤を吸入させたところ、患者が死亡。医師の問診義務違反を認めて遺族の請求を認容した地裁判決を取り消して、請求を棄却した高裁判決」

大阪高裁平成8年10月11日判決 判例タイムズ941号253頁 (争点) 医師がステロイド治療歴の有無を問診しなかったことは過失といえるか 医師がステロイド治療をしなかったことは過失といえるか (事案) A(当時24歳の女性)は、気管支喘息発作を発症したため、X1(Aの母親)と共に、Y市が運営するY...

2010年1月 8日
選択の視点【No.158、159】

今回は検査中の医療事故について、病院側の責任が認められた高等裁判所の裁判例を2件ご紹介します。 両事案とも、患者側の個人的な要因が症状の発生・悪化に影響を及ぼしているとして、損害の公平な分担の趣旨から、過失相殺の規定を準用して、損害額から3割を減額しています。 No.158の事案では、一審判決が患者...

2010年1月 8日
No.159「胃透視検査の際に投与されたバリウムが患者の腸内に滞留した結果、S状結腸に穿孔を発症。医師が検査後に下剤を投与しなかったことについて過失を認めた高裁判決」

大阪高等裁判所平成20年1月31日 判例時報2026号16頁 (争点) 医師が胃透視検査後、患者に下剤を処方投与しなかったことについて過失が認められるか。 (事案) 患者X(検査当時66歳の男性)は平成12年5月6日、Y医師が開設する内科、小児科、放射線科等の診療科目を標榜するYクリニック(以下、本...

2010年1月 8日
No.158「健康診断の採血時に患者の神経が損傷され、RSD又はカウザルギーが発症。患者の損害賠償請求を棄却した一審判決を破棄して、請求を認めた高裁判決」

仙台高裁秋田支部平成18年5月31日判決 判例タイムズ1260号309頁 (争点) 臨床審査技師の採血行為に過失はあったか 過失により患者にRSD又はカウザルギーが発症したか 損害(損害に関してXの個人的要因が寄与したか) (事案) X(昭和33年生まれの女性)は、昭和59年に県の教職員に任命され、...

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