医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2011年2月 3日
No.184「内視鏡的逆行性膵胆管造影検査後、患者が急性膵炎を発症し3日後に死亡。市立病院の担当医師の経過観察義務違反を認め、遺族の請求を認容した地裁判決」

長崎地方裁判所佐世保支部平成18年2月20日判決 判例タイムズ1243号235頁 (争点) 医師の経過観察義務違反等の有無 医師の過失と患者の死亡との間の因果関係の有無 (事案) 患者A(本件当時69歳の女性)は、平成14年(以下、同年については省略)8月3日17時ころ、胃の痛みのため、Y市が設置・...

2011年1月11日
選択の視点【No.182、183】

今回は、患者に対する行動制限(抑制・身体拘束)に関連した判例を2件ご紹介いたします。 No.182は、術後せん妄による転落死にいたった患者の遺族から、患者について体幹・両上肢の抑制を実施すべきであったという主張が大学病院側に対してなされた事案です。 裁判所は、大学病院の「行動制限(抑制・拘束)に関す...

2011年1月11日
No.183「入院中の高齢患者がせん妄の症状を発症して興奮状態となったところ、看護師らがミトンを用いてベッドに患者の身体を約2時間拘束。看護師らの行為を違法として損害賠償責任を認めた高裁判決を破棄し、患者の遺族の請求を全て棄却した最高裁判決」

最高裁第三小法廷平成22年1月26日判決 判例タイムズ1317号109頁 (争点) 看護師らがAに対して行った身体抑制は違法か (事案) A(当時80歳の女性)は、平成15年(以下、平成15年内の日付については年を省略)6月20日以降、両側胸部痛を訴えてB病院整形外科に入院していたが、7月16日、入...

2011年1月11日
No.182「大学病院入院中の患者が手術後に失踪し、転落死。術後せん妄による転落死についての病院側の予見義務を否定し、危険行動防止措置義務違反、捜索義務違反、家族への連絡義務違反、施設管理義務違反をいずれも否定し、遺族の請求を棄却した地裁判決」

東京地裁平成21年9月15日判決 判例タイムズ1328号196頁 (争点) 病院の医療従事者らが患者が術後せん妄を発症して転落死することを予見できたか 病院の医療従事者らに患者の危険行動を防止するための措置をとる義務があったか 病院の医療従事者らに患者を捜索する義務についての違反はあったか 病院の医...

2010年12月 7日
選択の視点【No.180、181】

今月は、癌手術の縫合不全について病院側の損害賠償責任が認められた判決を2件ご紹介します。 No.180の事案では、患者の胃壁に穿孔が生じ、再手術に至った原因について、患者遺族側は主位的にはサンプチューブによる圧迫であり、予備的には縫合不全であると主張しました。病院側は縫合不全が原因であると反論しまし...

2010年12月 7日
No.181「大腸癌の摘出手術後、縫合不全が原因で患者に肺炎、ARDSが発症し、後遺症が残る。適切な対処をしなかった医師および病院の過失ないし債務不履行を認めた高裁判決」

高松高裁平成22年2月25日判決 判例時報2086号53頁 (争点) 医師らの縫合不全の予防・発見に関する注意義務違反の有無 手術後の縫合不全と肺炎、ARDSとの間の因果関係の有無 損害 (事案) X(本件事故当時70歳の女性)は、Y1財団法人の経営するY病院の内科に通院し、メニエール病の治療を受け...

2010年12月 7日
No.180「胃癌手術後、患者が胆汁腹膜炎を発症して死亡。医師が手術後にサンプチューブを不適切な位置に固定したため縫合不全が生じたとして、病院の責任を認めた地裁判決」

大津地裁平成5年9月27日判決 判例時報1488号135頁 (争点) 医療法人に損害賠償責任はあるか 損害(逸失利益) (事案) A(本件当時67歳の女性)は、胃付近に痛みを覚え、昭和61年5月6日、医療法人Yが開設、経営するY病院内科を外来受診し、胃吻合部潰瘍及び胃癌の疑いのため、同月9日、Y病院...

2010年11月 4日
選択の視点【No.178、179】

今月は、医師の治療行為について業務上過失致死罪の成否が問題となった刑事事件の判決を2件ご紹介します。 No.178の判決は、腹腔鏡下手術のミスで医師3名が業務上過失致死罪に問われた事案です。新聞報道によれば、一審判決に対して医師3名が控訴したのですが、このうち執刀医は控訴を取り下げ、地裁判決が確定し...

2010年11月 4日
No.179「幼児が転倒し、綿あめの割りばしがのどに刺さったとして救急車で搬送されたが、帰宅後死亡。業務上過失致死罪で起訴された医師につき、注意義務違反はなく、救命可能性も確実ではなかったとして、一審の無罪判決を維持した東京高裁判決」

東京高等裁判所平成20年11月20日 判例タイムズ1304号304頁 (争点) 医師に割りばしの刺入による頭蓋内損傷を疑い、その確認をする義務があったといえるか 結果回避可能性ないし医師の不作為と患児の死亡との因果関係が認められるか (事案) 患者A(平成6年生まれの幼児)は、平成11年7月10日午...

2010年11月 4日
No.178「前立腺癌の男性に対して、大学病院の医師らが腹腔鏡下前立腺全摘術を施行したが、患者が死亡。業務上過失致死罪で起訴された執刀医につき、禁錮2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した地裁判決」

東京地裁平成18年6月15日判決 (出典ウェストロー) (争点) 専門的裁量性を有する医師の医療事故における刑事責任と量刑の事情 (事案) 患者A(以下、A)は、平成10年6月ころから、B1大学B2病院(以下、B病院)泌尿器科の外来を訪れていたが、平成14年9月、Y2医師(Aの主治医)やY3医師(泌...

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