医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2011年12月13日
No.204「精神病院に通院していた患者が他の精神病院に入院したが、入院の約5時間後の深夜に自殺。両病院の責任を認め、損害賠償の責任の範囲を別々に認めた高裁判決」

東京高等裁判所 平成13年7月19日判決 判例タイムズ1107号266頁 (争点) Y1病院の責任 Y2病院の責任 (事案) A(自営業・30代男性)が、ひどい頭痛と肩こりのため、平成5年2月8日にY1社会福祉法人が経営するY1病院精神科を訪れた。Y1病院のH医師は、当初は神経症と診断し、これに即し...

2011年11月 4日
選択の視点【No.202、203】

今回は、手術後に患者に生じた症状(No.202ではブドウ状球菌の繁殖、No.203では脊髄損傷)の原因について、具体的な特定がなされないまま(No.202では、A注射器具、B施術者の手指、C患者の注射部位のいずれかの消毒が不完全であったという選択的認定、No.203ではA手術機器の振動による脊髄損傷...

2011年11月 4日
No.203「交通事故により後遺症を負った患者の症状が、市立病院での手術後に悪化。医師の過失を概括的に認定し、患者の損害賠償請求を認めた高裁判決」

福岡高等裁判所 平成20年2月15日判決 判例タイムズ1284号267頁 (争点) 手術の際に脊髄を損傷させた過失を認定するにあたり、脊髄損傷の原因の具体的特定がどこまで必要か (事案) 交通事故の後遺症で四肢全体に重度の障害があったX(手術時68歳の鍼灸師の男性)が、Y市の開設するY病院において、...

2011年11月 4日
No.202「産婦人科病院の医師が無痛分娩方法として麻酔注射をしたところ、分娩後の妊婦に硬膜外膿瘍および圧迫性脊髄炎が発症。麻酔注射の際の消毒の不完全につき過失を認定するにあたり、どの部分の消毒が不完全であったかを明示しなかった控訴審判決を維持した最高裁判決」

最高裁判所第三小法廷 昭和39年7月28日判決 判例タイムズ165号78頁 (争点) 麻酔注射の際の消毒が不完全であるという過失の認定事実として、消毒が不完全な部分を確定しなければいけないか (事案) X(当時37歳の女性)は、昭和34年10月27日分娩のため、Y医師が経営するY婦人科病院(以下、「...

2011年10月 7日
選択の視点【No.200、201】

今回は、幼児や乳児の患者が死亡した事案で、病院側の責任が否定された判決と認められた判決を1件ずつご紹介いたします。 両事案とも、解剖が実施されませんでした。 No.200の判決では、遺族側の主張に沿う内容の医師の鑑定書と証言がありましたが、裁判所は、これらが、遺族の陳述書に依拠して、診察に当たった医...

2011年10月 7日
No.201「先天性の心臓疾患(ファロー四徴症)の患児が大学病院での手術後死亡。医師が動脈管閉鎖に対する適切な措置を怠ったとして、病院に損害賠償を命じた地裁判決」

東京地方裁判所平成13年7月5日判決 判例タイムズ1131号217頁 (争点) 患児Aが死亡するに至った原因 医師の過失の有無 (事案) A(死亡当時4ヶ月の乳児)は、平成6年7月21日に学校法人Yが開設、経営するY大学医学部附属病院(Y病院)において出生(妊娠39週3日、出生時体重2195グラム)...

2011年10月 7日
No.200「急性胃腸炎で大学病院を受診した外国人患児が急激な容態の悪化により死亡。脱水症状や、ショックなどに対する大学病院医師の過失を否定し、遺族の請求を棄却した地裁判決」

東京地方裁判所 平成5年6月4日判決 判例時報1510号116頁 (争点) 脱水症状に対する治療に過失はあったか ショックに対する治療に過失はあったか (事案) A(B国籍の当時3歳の幼児。留学目的で昭和60年3月に来日した父親の後から、母親とともに同年11月に来日した)は、昭和61年5月16日(以...

2011年9月 7日
選択の視点【No.198、199】

今回は、転送義務違反や、専門医への紹介義務違反が争点となり、結論としては患者の賠償請求が否定された最高裁判所の判決を2件ご紹介します。 No.198の判決紹介にあたっては、一審判決(東京地裁平成16年1月22日判決・判例タイムズ1155号131頁)及び控訴審判決(東京高裁平成17年1月18日判決・判...

2011年9月 7日
No.199「下肢の骨接合術等後に合併症として左下肢深部静脈血栓症が発症し、後遺症も残った患者から医療法人社団に対する、適切な医療行為を受ける期待権の侵害を理由とする損害賠償請求を認めた高裁判決を破棄し、患者の請求を棄却した最高裁判決」

最高裁判所第二小法廷平成23年2月25日判決 (判例時報2108号45頁/判例タイムズ1344号110頁) (争点) 期待権の侵害の有無 (事案) 大工の仕事をしていたXは、昭和63年10月29日、左脛骨高原骨折の傷害を負い、同年11月4日ころ、医療法人社団Y1が開設するY病院に入院し、整形外科医(...

2011年9月 7日
No.198「拘置所に勾留中の男性患者が脳梗塞を発症。翌日転院したが、重大な後遺症が残る。速やかに転送しても後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されていないとし、転送義務違反を理由とする国家賠償請求を認めなかった最高裁判決」

最高裁判所第一小法廷 平成17年12月8日判決(判例タイムズ1202号249頁) (争点) 転送義務違反を理由とする賠償責任の有無 (事案) X(当時51歳の男性)は、住居侵入罪で逮捕され、Y拘置所に勾留されていたが、平成13年(以下、同年度については省略)4月1日(日曜日)午前7時30分ころ、起床...

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