医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2008年11月12日
No.131「チーム医療として手術が行われる場合にその総責任者である医師が,自ら患者やその家族に対して自らの手術について説明しなくとも,説明義務違反の不法行為責任を負わない場合があるとした最高裁判決」

最高裁判所第一小法廷平成20年4月24日 判例時報2008号86頁 (争点) チーム医療の総責任者である医師に手術についての説明義務違反があるか (事案) 患者A(当時67歳の男性)は平成11年1月、近隣の病院で受けた心臓カテーテル検査の結果、大動脈弁狭窄及び大動脈弁閉鎖不全により大動脈弁置換手術が...

2008年11月12日
No.130「精神病院に入院中の患者が吐物の誤嚥による窒息で死亡。医師の過失を認定した高裁の判断に経験則違反があるとして控訴審判決を破棄し,更に審理尽くすために差し戻した最高裁判決」

最高裁判所第三小法廷平成19年4月3日 判例時報1240号176頁 (争点) 控訴審の認定した医師の転送義務違反・気道確保義務違反の判断が経験則に違反するか (事案) 患者A(昭和41年生まれの男性)は、昭和58年ころから異常行動が見られるようになり、同年11月、統合失調症と診断されてYの開設する精...

2008年10月15日
選択の視点【No.128、129】

今回は、入院中の感染について、病院側の損害賠償責任が認められた判決を2件ご紹介します。 No.128の判決は、もともと予後の厳しいことが予想された癌患者が、感染症の結果、入院が継続し、家族とのコミュニケーションも十分にとれなくなったため、人生最期の時期を平穏に送ることができなくなったことと、若干にせ...

2008年10月15日
No.129「国立病院で出生した新生児が、MRSAに感染し後遺障害を負う。感染を予見し適切な治療を行う義務を怠ったとして病院側に損害賠償を命じた判決」

神戸地方裁判所平成19年6月1日 判例時報1998号77頁 (争点) 患者がMRSAに感染したことに関して病院のMRSA感染予防対策に過失が認められるか 病院のMRSA感染治療に過失が認められるか (事案) 患者Xは、平成5年7月に国の開設していた国立Y病院(現在は独立行政法人国立病院機構Y医療セン...

2008年10月15日
No.128「大腸癌切除手術後、患者がカテーテル感染症になり、約7ヶ月後死亡。患者の死期が早まり平穏の日常生活に復帰できなかったことなどにつき、1200万円の慰謝料を含む損害賠償が認められた判決」

東京地方裁判所平成18年11月22日 判例時報1986号75頁 (争点) IVHカテーテルを早期に抜去すべき義務の有無 病院の担当医師の義務違反と死亡結果との因果関係 損害額 (事案) 患者A(昭和5年生まれのギャラリーを経営する女性)は、平成13年4月24日、同月8日より足元がふらつき、頭痛がある...

2008年9月 5日
選択の視点【No.126、127】

今回は、術後管理が問題となり、病院側の損害賠償義務が認められた判決を2件ご紹介します。) No.126の事案では、患者遺族が受給した遺族(厚生)年金について、「年金の受給者が不法行為によって死亡した場合、その相続人が被害者の死亡を原因として遺族年金の受給権を取得したときは、支給を受けることが確定した...

2008年9月 5日
No.127「患者が心臓弁膜置換手術後に、低酸素脳症を発症し、その後死亡。医師の術後管理につき、止血及び輸血措置、心タンポナーゼに対する検査、処置について心不全発症防止義務違反を認め、国立病院側に慰謝料の支払義務を認めた判決」

大阪地方裁判所平成20年2月27日判決 判例タイムズ1267号246頁 (争点) 遷延性意識障害に至る機序 心不全発症防止義務違反があるか 心不全発症防止義務違反と患者の死亡との間に因果関係があるか (事案) 患者A(当時74歳の女性)は、平成11年12月、○○府立U病院(以下U病院という)に心不全...

2008年9月 5日
No.126「強直性脊椎骨増殖症の患者が頸椎骨切除手術後に反回神経麻痺による声帯閉鎖に起因する呼吸不全により死亡。術後の呼吸状態の経過観察につき医師に注意義務の懈怠があるとして、病院側に損害賠償義務を認めた判決」

名古屋地方裁判所平成19年1月31日 判例時報1992号101頁 (争点) 患者の死因と予見可能性の有無 呼吸管理に関する経過観察義務懈怠の有無 経過観察義務懈怠と結果との間の因果関係の存否 (事案) 患者A(死亡当時71歳の男性)は、平成5年ころ、声帯の手術を受けた際、合併症として左反回神経麻痺を...

2008年8月12日
選択の視点【No.124、125】

今回は、いわゆるガイドラインが訴訟において取り上げられた事案を2件ご紹介します。 No.124の裁判では、原告(患者)側からクモ膜下出血の診断方法について平成13年3月付けの厚生省ガイドラインが証拠として提出されています。判決文で具体的なガイドラインの引用はされていませんが、当時の医学的知見を判断す...

2008年8月12日
No.125「同種末梢血幹細胞移植のドナーが末梢血幹細胞の採取から1年2ヶ月後に死亡。医師と病院経営法人に対する説明義務違反による損害賠償義務は認め、ガイドラインを発表し、フォローアップ事業を展開する学会の監督義務違反を否定した判決」

大阪地方裁判所平成19年9月19日判決 判例タイムズ1262号299頁 (争点) 医師に説明義務違反があるか 学会のガイドライン遵守に関する監督義務違反があるか (事案) 患者A(昭和14年生まれの女性)は、平成13年7月10日、実弟であるBのために同種末梢血管細胞移植(PBSCH)のドナーとなるた...

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