医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.404、405】

今回は、医師の過失と患者に生じた後遺障害・損害との因果関係が争点となった裁判例を2件ご紹介します。両事案とも誤診・見落としに関する医師の過失(注意義務違反)については当事者間に争いがない事案です。

No.404の事案では、入院期間(394日)中の患者の妻の付添看護費(患者の請求は日額3000円)について、病院側は医療従事者による完全介護制度下にあったとして付添の必要性を争いました。裁判所は、患者が一時期命の危険のあるほど重篤な状態であったこと、その後の転院先病院では患者の精神的なケアを重要視し、そのために家族になるべく付き添ってもらう方針の下、患者の妻に対し患者にできるだけ長い時間付添うように求めていたことなどから、付添が必要であった期間を69日と判示し、日額は2000円を限度として付添看護費を認めました。

No.405の事案では、病院側は、見落とした検査結果を受けて患者の脳腫瘍が発見されていたとしても、最終的には脳腫瘍摘出術を実施することになり、患者に一定の後遺症が残存していた可能性は否定できない旨主張しました。しかし、裁判所は、脳腫瘍摘出術においては一般的に腫瘍のサイズが小さいほうが、手術による機能予後低下や合併症の確率は低いなどとされており、検査結果を見落とした時点では患者の脳腫瘍もごく小さかったことからすれば、適時に脳腫瘍摘出手術を行っていれば、患者に高度の後遺症が残存していた可能性は低いというべきであると判示して、病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2020年4月15日
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