医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.414、415】

今回は、どこまでが医師の過失と相当因果関係のある損害なのかが争点となった裁判例を2件ご紹介いたします。

No.414の事案では、交通事故の加害者及び車両の所有者は、事故被害者である患者に対して、逸失利益や後遺障害慰謝料等の損害賠償として、連帯して2870万5217円の支払が命じられましたが、交通事故に伴う患者の傷害に対する治療において過失のあった大学病院と交通事故の加害者らとの間の共同不法行為は成立しないと判断され、大学病院側は、精神的苦痛に対する慰謝料等330万円の支払が命じられました。

また、抜釘術において神経を刺激ないし損傷をした過失について、大学病院側は、抜釘に際し、神経を刺激ないし損傷することを100パーセント避けることは不可能であると主張しましたが、裁判所は、本件抜釘術において神経を刺激ないし損傷する危険性は特に高いというものではないこと等の事実関係に照らすと、神経の損傷等を回避することは可能であったといわざるを得ず、これを100パーセント避けることができないとして医師の過失が否定されると解することは相当ではない、と判示して、大学病院側の主張を採用しませんでした。

No.415の事案では、裁判所は、利用者の遺族がショートステイの施設を設置する事業者に対し、口腔ケアの際に利用者に付き添うことや椅子を設置することなどを求めていないことについて過失相殺の要否を検討しました。そして、当時の利用者の認知能力及び身体能力、利用者の妻が事業者に対し2度にわたりショートステイ連絡表で注意を喚起していたこと、事業者が利用者に対しその能力に応じた短期入所生活介護の提供を約した介護事業者であること、事業者は利用者が不安定な姿勢で口腔ケアを行っているのを知っていたことなどを考慮すると、本件事故により利用者が被った損害について、過失相殺をすべきものとは解されないと判断しました。

両事案とも実務の参考になるかと存じます

カテゴリ: 2020年9月10日
ページの先頭へ