医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2007年6月 5日
選択の視点【No.96、97】

今回は、入院中の患者のケアに関する判決を2件ご紹介します。 No.96の判決は、病院側の過失を認め、患者が最重症のウイルス性脳炎に罹患していたことから、過失がなくても最終的な救命は困難であったとして、死亡と過失の因果関係は認めませんでした。しかし、適切な治療を受ける期待及び延命利益の喪失が、患者自身...

2007年6月 5日
No.97「入院中の患者に床ずれ(褥瘡)が発症し、その後腎不全で死亡。病院側に損害賠償を命じる判決」

東京地方裁判所平成9年4月28日判決(判例時報1628号49頁) (争点) YがAに対し褥瘡の予防と治療について必要とされる医療処置を講じたかどうか Aの死亡と褥瘡との因果関係の有無 損害額 (事案) 患者A(昭和7年生まれの男性)は、平成4年1月5日日午前1時頃外出先で倒れ、救急車でI病院に搬送さ...

2007年6月 5日
No.96「市立病院の入院患者の気管に挿入したカニョーレが移動し、患者が死亡。市に損害賠償を命じる判決」

神戸地方裁判所平成8年3月11日判決(判例タイムズ915号232頁) (争点) 患者Aの死亡原因 カニョーレ装着後の管理上の過失の有無 損害 (事案) 患者A(昭和38年生まれの男性)は、平成2年11月30日、ウイルス性脳炎の疑いでY市立Y市民病院(以下Y病院という)に入院した。同病院内科医師T医師...

2007年5月18日
選択の視点【No.94、95】

今回は、市立病院での診療拒否に関する判決を2件ご紹介します。 なお、No.94の判決は、一審判決後、控訴審で和解が成立したとのことです。 医師法19条1項は、「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と規定しています。医師の応招義務を規定し...

2007年5月18日
No.95「市立病院が腰椎骨折患者につき、HIV感染者であることから手術的治療を回避。医学的根拠のない差別的取扱による慰謝料の支払いを市に命じる判決」

甲府地方裁判所平成17年7月26日判決(判例タイムズ1216号217頁) (争点) 腰椎骨折に対して手術的治療を実施しなかったという不作為と後遺障害との間に因果関係があるか 前記1の因果関係が認められない場合に、患者Aの適切な治療を受ける期待権が侵害されたか (事案) 患者Aは、1970年(昭和45...

2007年5月18日
No.94「救命救急センターである市立病院が、交通事故で重傷を負った患者の受け入れを拒否しその後患者が死亡。市に不法行為責任を認めた地裁判決」

神戸地方裁判所平成4年6月30日判決(判例時報1458号127頁) (争点) Y病院が患者Aの診療を拒否したか 診療拒否があったとして、拒否に正当事由が認められるか (事案) Y市が開設しているY病院は、救急告示病院であり、医療法31条以下に規定されている公的医療機関であり、Y市内における救命救急セ...

2007年4月 4日
選択の視点【No.92、93】

今回は手術の際に体内に針やガーゼを残置した事案を2件ご紹介します。 No.92の判決で、「開腹手術にあたる医師は患者の体内に手術に使用する器具を残置することのないよう注意を尽くすべき義務を負う」と判示されているとおり、体内への残置が注意義務違反(過失)に該当することは明らかです。No.93の判決では...

2007年4月 4日
No.93「不妊治療を受けていた患者の子宮筋腫核出術の際、患者の体内にガーゼを残置。その後も3年間不妊治療を継続していた大学病院の責任を認める判決」

東京地方裁判所平成18年9月20日判決 判例時報1952号113頁 (争点) 本件ガーゼ残置による利益侵害の内容 損害 (事案) 患者X(昭和34年生まれの既婚女性)は、平成7年9月19日から、妊娠目的で、Y学校法人が設置経営する大学病院(以下Y病院という)産婦人科への通院を開始した。その後、Xに子...

2007年4月 4日
No.92「帝王切開の際、医師が手術用の縫合針を妊婦の子宮内に残置。大学病院側の責任を認める判決」

東京地方裁判所昭和61年6月10日判決 判例時報1242号67頁 (争点) 本件伏針が、本件手術の際に残置されたものか否か 損害 (事案) 患者X1(昭和11年生まれの女性)は、昭和34年3月8日、K病院で長女を自然分娩し、昭和39年10月2日には、N病院で帝王切開により長男を出産した。 X1は昭和...

2007年3月12日
選択の視点【No.90、91】

今回は、疾患のある人が医療過誤により死亡した場合で、損害賠償の項目のうち、逸失利益が否定された判決を2件ご紹介いたします。 逸失利益とは、その人が生存していれば得たであろう利益のことを指します。 No.90の判決では、患者が肝臓病の療養に専念しており、現実に働いて収入を得る蓋然性を認めることが困難で...

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