医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2006年8月16日
選択の視点【No.76、77】

今回は、市立病院の看護師の過失に関連する判決を2件ご紹介します。 なお、判決文中、「看護婦」と表記されている部分は「看護師」に修正しております。 No.77は看護師による点滴(静脈注射)の事案です。 看護師による静脈注射について、従前は、看護師の業務の範囲を超えるものであるとの行政解釈がありました(...

2006年8月16日
No.77「市立病院看護師の点滴後、泌尿器科受診患者に右橈骨神経不全麻痺が発生。市に損害賠償を命ずる判決」

名古屋地方裁判所平成14年3月15日判決(判例時報1796号133頁) (争点) 本件注射と右橈骨神経不全麻痺との因果関係 市(Y病院)の責任原因(過失) 損害額 (事案) 患者Xは、昭和25年5月23日生まれの男性で、腎結石のため、平成2年末ころから、Y市が開設するY市民病院(以下「Y病院」という...

2006年8月16日
No.76「人工呼吸器のアラームのスイッチを市立病院の看護師が入れ忘れ、入院中の4歳男児が呼吸不全で死亡。市に損害賠償請求を命ずる判決」

神戸地方裁判所平成5年12月24日判決(判例時報1521号104頁) (争点) 本件事故で患者Aが死亡したことによる慰謝料額はいくらか (事案) 患者A(死亡当時4歳の男児)は、昭和63年6月14日に出生したが、生後8か月頃になってアイセル病(ムコリピドーシスII型)という先天性代謝異常の障害がある...

2006年7月21日
選択の視点【No.74、75】

今回は、眼科に関連する判決を2件ご紹介します。 No.74の判決では、大学病院における眼科と内科との間で、診療依頼状や返信を患者に持参させて他科を受診させるという方法で検査結果の伝達を行っており、眼科の診断結果が内科医師に伝わるまでに3ヶ月近く経過したことにつき、眼科と内科双方の医師の義務違反が指摘...

2006年7月21日
No.75「コンタクトレンズの購入・使用後、左眼に角膜混濁・矯正視力低下の後遺障害。販売、処方に関し、販売会社や眼科医師の過失が認められた判決」

大阪地方裁判所堺支部平成14年7月10日判決(判例タイムズ1145号177頁) (争点) コンタクトレンズの販売、処方に際して、医師や販売会社に告知、説明義務違反があったか 医師に治療義務違反があったか (事案) 患者K(当時22歳の女性)は、平成11年4月8日、A株式会社が経営するコンタクトレンズ...

2006年7月21日
No.74「視野異常が認められた患者について下垂体腫瘍の発見が遅れたとして大学病院及び内科担当医師の過失が認められた判決」

東京地方裁判所平成14年4月8日判決(判例タイムズ1148号250頁)) (争点) 下垂体腫瘍の発見が遅れたことにつき、内科担当医師に過失があったか (事案) 患者X(女性・年齢不明)は、平成11年1月頃から、視力低下を感じはじめ、3月には近所の開業医や都立病院の眼科を受診したが、視野異常は認められ...

2006年6月12日
選択の視点【No.72、73】

今回は、患者の容態が急変した事案についての判決を2件ご紹介します。 「因果関係」や「過失」を考える上で参考になろうかと思います。 No.72は、損害賠償請求訴訟における因果関係の立証の程度についての指導的役割を果たしている判決です。そして、この最高裁判決で肯定された因果関係を前提に、差し戻しされた高...

2006年6月12日
No.73「麻酔剤でのうがいからショック症状に陥り、健忘症候群の後遺症。患者の特異体質によるとして、医師の過失を否定した判決」

佐賀地方裁判所判決 昭和60年7月10日判決(判例時報1187号114頁) (争点) キシロカイン希釈水溶液でのうがいとショック及び後遺症との因果関係 医師の過失の有無 (事案) 患者A(当時40歳の女性。公務員)は、昭和51年7月7日Y医師経営の病院に初来院し、咽頭痛を訴えた。Y医師は、Aに既往症...

2006年6月12日
No.72「3歳男児がルンバール施術後、嘔吐、けいれんの発作等を起こし、知能障害・運動障害等の後遺症が残った。ルンバール施術と男児の発作及びその後の病変との因果関係を認める最高裁判決

最高裁判所第二小法廷 昭和50年10月24日判決(判例時報792号3頁) (争点) 訴訟上の因果関係の立証の程度 本件ルンバールと患者の発作及びその後の病変との因果関係 (事案) 患者A(当時3才の男児。もともと脆弱な血管の持主で入院当初より出血性傾向が認められた)は、化膿性髄膜炎のため昭和30年9...

2006年5月24日
選択の視点【No.70、71】

今回は、患者の自殺が関連する判決を2件ご紹介します。 患者が自殺したことにより、損害が拡大あるいは発生した場合に、過失相殺の法理を類推適用して、損害賠償額を減額するという法律構成を、両判決ともとっています。ただし、類推適用する条文について、No.70の判決は、不法行為に関する民法772条2項「被害者...

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