医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.136、137】

今回は、医師の意見書や鑑定書についての高等裁判所の評価の誤りを最高裁判所が指摘した判決を2件ご紹介します。

両判決とも、高等裁判所には「採証法則違反」があったと判示しています。「採証法則違反」とは、法律に明記されているものではありませんが、例えば「正当に証拠を考慮すれば反対の事実認定に至ったはずの場合」「信用すべきでない証拠を信用し、結果的には証拠がないのにあるとして事実認定した場合」など、証拠の評価を誤った場合に、実務上用いられている概念です。

No.136の判決中には、「鑑定書」と「意見書」という表現が区別されて使われています。いずれも、医師が、事案に関する専門家としての見解を表明した書面ですが、「鑑定書」は裁判所が「鑑定人」として指定した医師の作成した書面を指します。

そして、当事者の依頼により作成され、当事者いずれかが提出した医師作成の書面は「意見書」と表記されています。

No.137の判決の事案では、高等裁判所では口頭弁論期日が1回しか開かれずに審理が終結されました。このような審理過程(俗に「1回結審」などと呼ばれています)を経ることは、控訴審ではままあることです。が、地裁判決と反対の結論を出す際に、口頭弁論期日を1回しか開かないというケースは珍しいと思われます。

医療事故訴訟において、医師の意見書や鑑定書が作成・提出されることは多く、両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2009年2月 4日
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