医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2018年6月 7日
選択の視点【No.360、361】

今回は、市立病院における医師の注射や手術において、注射位置が適正でなかったことや、手術部位を誤認したことにつき、病院側の責任が認められた事案を2件ご紹介します。 No.360の事案では、患者側は、後遺障害逸失利益の請求もしましたが、裁判所は、患者の左肩に残存した後遺障害(患者の疼痛は、相当程度に軽減...

2018年6月 7日
No.361 「市立病院で、手術部位の誤認により、固定する必要のない椎間を固定。患者主張の障害は否定したが、慰謝料及び弁護士費用の損害額を一審よりも増額した高裁判決」

大阪高等裁判所平成27年9月3日判決 ウェストロー・ジャパン (争点) 固定する必要のない椎間を固定したことによって患者に生じた障害 (事案) X(症状固定時44歳の女性)は、平成18年9月4日、Y市が設置・運営する病院(以下、「Y病院」という。)において、第6・第7頸椎間(以下「C6/7」という。...

2018年6月 7日
No.360 「医師が子宮頸がん予防ワクチンを適正位置より高い位置に注射した過失により、患者に左肩関節炎が発症。市立病院側に損害賠償を命じた地裁判決」

福岡地方裁判所小倉支部平成26年12月9日判決 医療判例解説第60号(2016年2月)58頁 (争点) 医師が肩峰三横指下の位置に行うべき子宮頸がん予防ワクチンの接種を、それより高い位置(肩峰一横指下の位置)に打ったか否か (事案) X(昭和38年生まれの女性)は、平成22年頃、子宮頸がん予防ワクチ...

2018年5月10日
選択の視点【No.358、359】

今回は、説明義務違反が認定された事案を2件ご紹介します。 No.358の事案では、心臓カテーテル検査と患者右足の血管閉塞、足趾切断との因果関係も争点となりました。 裁判所は、患者が検査前から両足尖部のしびれや痛みを訴えており、検査前には右足により強い間欠性跛行を訴えていたこと、転院先での手術の際に得...

2018年5月10日
No.359 「都立病院で看護師の誤投薬により入院患者が死亡。院長の遺族に対する説明義務違反を認めた高裁判決」

東京高等裁判所平成16年9月30日判決 判例時報1880号 72頁 (争点) 院長の説明義務違反の有無 (事案) 平成11年1月8日、A(女性)は、関節リウマチにより左中指疼痛及び腫脹が増強したため、東京都(一審の相被告)の開設するY病院整形外科を受診した。診察の結果、慢性関節リウマチ治療のために左...

2018年5月10日
No.358 「閉塞性動脈硬化症と診断されていた糖尿病患者が心臓カテーテル検査を受けた後、血管閉塞が生じ、右足趾全部切断に至る。医師には検査により血栓症になる危険性についての説明義務違反があるとした地裁判決」

大阪地方裁判所平成14年11月29日判決 判例時報1821号 41頁 (争点) 心臓カテーテル検査の適応の有無 心臓カテーテル検査についての説明義務違反の有無 (事案) X(事件当時67歳の男性・会社代表者)は、昭和41年(35歳)ころ、糖尿病と診断され、平成9年5月、糖尿病性腎症のため、A大学附属...

2018年4月 9日
選択の視点【No.356、357】

今回は、重度の新生児仮死の状態での出生につき、病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介します。 No.356の事案では、裁判所は、慰謝料の判断にあたり、新生児が自発呼吸もできないままに死亡時までNICU(新生児集中治療室)に入院しており、両親が我が子として手に取ることさえなく、妊娠期間よりも生存期間...

2018年4月 9日
No.357 「重症新生児仮死の状態で出生し、重度の後遺障害が発生したことにつき、医師に低酸素状態を原因とする脳性麻痺の後遺障害を回避するために急速遂娩を検討・実行すべき義務違反があったとして、病院に対し、子と両親合計で1億8000万円以上の賠償を命じた地裁判決」

高知地方裁判所平成 28年12月9日判決 判例時報2332号 71頁 (争点) 急速遂娩の準備及び実行をすべき義務を怠った過失の有無 (事案) X2(X1の母・初妊婦)は出産日の前日(妊娠39週2日)の午前7時45分頃、破水したため、午前8時45分頃、Yの運営する病院(以下、Y病院という)を訪ねた。...

2018年4月 9日
No.356 「子宮破裂後の分娩で重症新生児仮死に陥った新生児が約7ヶ月半後に死亡。帝王切開後の経膣分娩を試みた医師に継続監視を怠り子宮破裂の徴候を見落とした過失があるとした地裁判決」

福島地方裁判所平成25年9月17日判決 判例時報2213号83頁 (争点) 帝王切開後の経膣分娩(VBAC)における医師の過失の有無 (事案) Xは平成21年1月に、Y医師の経営するYマタニティ・クリニック(以下、Yクリニックという)において長男を帝王切開により出産した。 退院の際、XはYクリニック...

2018年3月 9日
選択の視点【No.354、355】

今回は患者が死亡した事案で、病院側の転送義務違反が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.354の事案では、裁判所は、医師らが患者に心筋梗塞の既往症が有ることを十分に了知した上で受け入れて脳内出血の治療を開始し、入院後も顕著な心筋梗塞の発作が発現していたものである以上、初期の治療目的が専ら脳内出...

ページの先頭へ