今回は、患者・入所者の転落につき、病院・施設側の工作物責任が認められた裁判例を2件ご紹介します。
民法717条は、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって、他人に損害が生じた場合にはその工作物の占有者が被害者に対して損害賠償の責任を負うことを定めています。そして、工作物が通常有すべき安全性を欠く状態にあるときは、瑕疵があるとされています。
No.542の事案では、施設側は、入所者が事理弁識能力ないし一定程度の合理的な判断能力を有していたこと、入所者の家族が入所に当たり適切な情報提供を全くしなかったことなどから過失相殺をすべきであると主張しました。
しかし、控訴審裁判所は、そもそも本件事故の態様に照らし、本件事故当時、入所者が合理的な判断能力を有していたとは認め難いし、当該施設は認知症専門棟であって、認知症患者に一般にみられる徘徊ないし帰宅願望に基づく行動に適切に対処することが求められていること、入所者が徘徊ないし帰宅願望に基づく行動をする認知症患者であることは情報提供されていること、前回の短期入所においても、帰宅願望を現していたことなどを考慮すれば、施設側の主張は採用できないと判断しました。
No.543の事案では、病院側は、転落事故は、患者の意思に基づく自発的な行動によって発生したものであるから、相当な割合の過失相殺がなされるべきであると主張しました。
しかし、裁判所は、本件事故当時に患者が事理弁識能力又は合理的な判断能力を有していたとは認め難く、本件事故は高次脳機能障害の症状の影響により発生したというべきであるから、本件事故の発生に関して患者に過失は認められないとして、病院側の主張を採用しませんでした。
両事案とも実務の参考になるかと存じます。














