医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.228、229】

今回は、検査義務違反や、病理診断後の検査結果を踏まえて再検討すべき義務違反により、病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介します。

No.228の事案では、病院側は、検査に遅延があったとしても、それは、患者が主治医の入院勧告を拒否して退院し、その後の外来通院中も入院勧告を拒否し続けていたことにより、入院による集約的検査が不可能になったためであり、医師に注意義務違反はないという主張もしました。

しかし、裁判所は、病院の診療録及び看護記録の記載や医師の尋問内容から、主治医が、患者の悪性腫瘍の可能性・早急に検査を進行させる必要性の高さを認識した上で、患者に入院を積極的に説得していたとは認められず、患者がそれを強硬に拒否したとも認められないとして、医師の注意義務違反が、患者が主治医の入院勧告を拒否した事実によって左右されるものではないと判示しました。

No.229の事案では、臨床の担当医師は、病理医が下したグループVとの診断が絶対的な意味を持っていると考えた旨述べましたが、裁判所は、臨床の担当医師が、病理医の判断内容の詳細について具体的に確認したわけではなく、その診断に対して直ちに絶対の信頼を置いてよい状態であったとは認められないなど判示しました。

両事件とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2012年12月13日
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