医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.166、167】

今回は病院の患者に対する説明・顛末報告義務が問題となった事案を2件ご紹介します。

No.166の事案は、蕁麻疹の治療に来た患者に対して、医師がそもそも効能・効果のない薬剤の注射を指示し、さらに准看護師が注射すべき薬剤を取り違えるという経過をたどり、患者に重大な後遺症が残りました。この点について裁判所は「医療行為に従事する専門家としては通常考えがたい経過をたどって」本件医療事故が生じたと指摘しています。そして、これらについては極めて単純な調査で直ちに判明する事柄であるにもかかわらず、病院側の事故原因の説明・報告が誠意あるものではなかったと判断しています。

No.167の事案は、これに先立ち、患者が歯科医師の診療行為の過誤を理由に損害賠償を求めた訴訟が提起され、最高裁まで争われた結果、患者の敗訴判決が確定しています。そこで病院側は、今回の請求は、既に確定した判決の「既判力」に抵触し、紛争の蒸し返しとなり許されないと主張しました。しかし、裁判所は、前の損害賠償請求訴訟はあくまでも診療行為の過誤を理由とするものであり、本件損害賠償請求訴訟はカルテの開示や顛末報告義務の違反という、診療行為以外の過誤を理由とするものであるとして、既判力に抵触しない(紛争の蒸し返しにはあたらない)と判示しました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2010年5月11日
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