医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.80、81】

今回は、内視鏡手術に関する判決を2件ご紹介します。

NO.80の判決は、重い後遺症を負った乳児だけでなく、その両親についても精神的損害の賠償、いわゆる慰謝料の請求を認めています。

民法第711条は「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と規定し、被害者が死亡した場合については、近親者の慰謝料請求を認めています。しかし、本件のように死亡していない場合について近親者の慰謝料請求が認められるかどうかは条文上明らかではありません。 この点について、最高裁判所(昭和33年8月5日小法廷判決)は、被害者が生命を害された場合にも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときには近親者固有の慰謝料を請求できると判示しました。

No.80の判決でも、裁判所は、本件後遺障害の程度に照らせば、乳児はもとより、その両親も、子供の「健やかな人生の全てを失ったに等しい深甚な苦痛を余儀なくされたことが明らか」だと判示して、両親固有の慰謝料の請求を認めています。

No.81の判決では、過失がなくても患者の痛みが残った可能性があることや、関係ない部位の治療も一部行われたことなどを考慮して、損害賠償額を減額している点も注目されます。

カテゴリ: 2006年10月18日
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