医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2023年3月10日
No.475「自転車の転倒事故で右足関節を脱臼骨折した患者に、骨折手術後に右足関節の用を廃する等の後遺障害が残存。医師に骨折手術後の創部感染に対する早期の診断及び治療を怠った過失を認めた地裁判決」

名古屋地方裁判所 平成27年9月16日判決 医療判例解説61号 88頁 (争点) 骨折手術後の創部感染に対する早期の診断及び治療を怠った過失の有無 因果関係 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇(事故当時45歳のT国籍男性・料理店経営)は、平成20年9月30日(以下、特段の断りのない...

2023年3月10日
No.474「交通事故による骨折で入院後、患者の左足が壊死し切断。医師に血管損傷の存在を看過した過失があるとした地裁判決」

東京地方裁判所平成4年7月31日判決 判例タイムズ804号164頁 (争点) 左足壊死の原因 医師の過失の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 昭和55年3月6日、◇(事故当時16歳の男子高校生)は、無免許でオートバイを運転中にマンホールの上で転倒(以下、「本件事故」という。)し、...

2023年2月10日
選択のポイント【No.472、473】

今回は、肺癌治療について病院側の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.472の事案では、放射線治療による放射線脊髄症発症について病院側の過失が認められました。 その上で、損害について、裁判所は、放射線治療による癌の完治率は2割程度であり、適切な照射方法を採用した場合に、癌の再発の可能性が...

2023年2月10日
No.473「右肺の呼吸機能が不十分であったのに、治療法の適応を誤った過失により肺癌患者の左肺全部摘出手術を行った結果、患者の死期が早まったとして、慰謝料500万円が認められた地裁判決」

東京地方裁判所平成13年2月27日判決  判例タイムズ1124号241頁 (争点) 治療法の適応を誤った医師の過失により、患者の死期が早まった事案における損害算定 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(妻と成人の子がいて、仕事もしていた男性)は、平成9年7月ころ、咳の自覚症状があった...

2023年2月10日
No.472「肺癌患者に放射線治療を行ったが放射線脊髄症を発症して患者が死亡。国立病院の担当医に、脊髄への照射を回避すべき措置を怠った過失があるとした地裁判決」

東京地方裁判所平成7年9月22日判決 判例タイムズ916号192頁 (争点) 1回目及び2回目の放射線治療の方法に過失があるか否か *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和7年生まれ・平成4年の死亡時60歳の女性・主婦)は、昭和59年5月22日、国(△1)の設置・経営する病院(以下...

2023年1月10日
選択のポイント【No.470、471】

今回は、検査・検診における医師の過失・義務違反について、病院側の責任が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.470の事案では、医師の過失と、出生児の障害についての因果関係も争点となりました。 この点につき、裁判所は、医師が正確に妊婦の風疹罹患を判定して伝えていたとしても、出生児の障害は回避でき...

2023年1月10日
No.471「乳がん検診を受け、異常なしと診断された女性が、その後、右乳頭腺管がんの診断を受け死亡。医師の乳がん検診に係る覚知義務・要精検義務の債務不履行(義務違反)を認めたが、義務違反と死亡との因果関係は否定し、慰謝料と弁護士費用のみ損害賠償を認めた高裁判決」

広島高等裁判所岡山支部令和3年1月28日判決 医療判例解説2022年8月号(第99号)14頁 (争点) 14年乳がん検診における覚知・要精検義務違反の有無 *以下、原告及び控訴人を◇、被告及び被控訴人を△と表記する。 (事案) A(死亡当時64歳の女性)は、U市の自治体検診として△協同組合の設置する...

2023年1月10日
No.470「医師が風疹に罹患した妊婦につき、風疹抗体価の再検査指示を出さず風疹罹患の可能性を否定し、先天性風疹症候群による障害を負った子が出生。医師の過失を認めて慰謝料の支払を命じた地裁判決」

前橋地方裁判所平成4年12月15日判決 判例タイムズ809号189頁 (争点) 風疹罹患の看過に関する医師の過失の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇1は、昭和63年7月21日、地方自治法に基づく一部事務組合である△1の開設する総合病院(以下、「△病院」という。)を受診し、まず...

2022年12月 9日
選択のポイント【No.468、469】

今回は、患者の容態確認のためのモニタの装着や設定確認について病院側の過失が認められた事案を2件ご紹介します。 No.468の裁判例では、患者側は、麻酔の過量及び執刀開始の時期についても過失がある旨主張しました。 これらについて、裁判所は、本件事故の原因については、血圧低下に伴う呼吸停止、重篤な血圧低...

2022年12月 9日
No.469「くも膜下出血により入院していた患者が低酸素脳症に陥り、その後死亡。生体情報モニタのアラーム設定確認が不十分だったとして大学病院の過失が認められた地裁判決」

東京地方裁判所令和2年6月4日判決 判例タイムズ1488号229頁 (争点) 医療従事者に、生体情報モニタのアラーム設定を誤り、これを見落とした過失の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(事故当時66歳の男性。統合失調症の既往歴あり)は、平成27年(以下、特段の断りのない限り同...

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