医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.548、549】

今回は、手術後の対応について病院側の過失が認められた事例を2件ご紹介いたします。

No.548の事案では、病院側は、患者が若く、心循環系に重篤な合併症がなかったこと、手術中の血圧ガス分析の結果から、循環系異常が認められないこと、蘇生措置中の午後2時24分の血液ガスデータの結果が呼吸停止から心停止を直ちに引き起こすようなものでないから、本件は、心停止が呼吸停止に先行した事例であると解すべきところ、心停止の原因、機序については血管迷走神経反射など反射性の循環系の急激な変化ないし心因性の原因によるものというべきであるが、これによる心停止を予見することは不可能であると主張しました。しかし、裁判所は、本件手術で使用されたドルミカム、セボフレン、フェンタネスト、タラモナール、アナペイン等には心停止の副作用があること、ワゴスチグミンによる迷走神経反射や誤嚥による迷走神経反射性徐脈や、逆流性食道炎が迷走神経反射に関与する可能性も考えられることを勘案すると、麻酔担当医師には、本件手術において、患者が術後心停止に至ることの予見可能性があったというべきであると判示して、病院側の主張を採用しませんでした。

No.549の事案では、患者担当看護師によるカルテの修正が行われていました。裁判所は、最初に記載したものが必ずしも正確であるとまではいえないし、被告病院の責任回避の目的のみで修正されたものとも言い難く、バイタルサインやその時々にされた措置と整合させるために修正を加えることはあり得るとしつつも、患者担当看護師は、修正の理由として、他の当直看護師とディスカッションをしながら適宜修正を加えていったと供述するが、患者の担当看護師が執った措置について、担当ではない他の当直看護師の記憶が患者担当看護師の記憶より正確であるとは考え難い、また、患者担当看護師は、担当患者の死亡という重大な事態の診療経過を記録するために記載したのであり、最初の記載の際に内容の正確さに十分注意を払っていたはずであると判示して、患者担当看護師のカルテの記載は、基本的に修正される前のものが信用できるというべきであると判断しました。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2026年4月10日
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