医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2025年5月12日
選択のポイント【No.526、527】

今回は高齢者の褥瘡に関する裁判例を2件ご紹介します。 No.526の事案では、被告となった老人ホーム側は、入所者の死亡の原因はガス壊疽の急激な悪化によるものであり、入所者が病院へ救急搬送された後、速やかにガス壊疽との診断がされ、これに対する適切な治療が行われていれば、救命され、又は救命されたであろう...

2025年5月12日
No.527「入院中の患者に褥瘡が発生し、転院先の病院で死亡。医療従事者に褥瘡発生を防止すべき義務を怠った過失及び褥瘡を適切に治療すべき義務を怠った過失を認めた地裁判決を維持した高裁判決」

東京高等裁判所平成30年9月12日判決 判例時報2426号32頁 (争点) 褥瘡発生を防止すべき義務を怠った過失の有無 6月20日の初回の褥瘡回診後、褥瘡を適切に治療すべき義務を怠った過失の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和10年生まれの男性。平成25年6月20...

2025年5月12日
No.526「介護有料老人ホームの入所者の褥瘡が悪化し、細菌感染による敗血症を発症して死亡。老人ホーム側の債務不履行責任が認められた地裁判決」

横浜地方裁判所平成24年3月23日判決 判例時報2160号51頁 (争点) 入所者の褥瘡の悪化に関して老人ホーム側に債務不履行・注意義務違反があるか否か *以下、原告を◇1ないし◇4、被告を△と表記する。 (事案) A(大正7年生まれ・死亡当時87歳の男性)は、平成3年以降、糖尿病にり患しており、平...

2025年4月10日
選択のポイント【No.524、525】

今回は、看護師による針の穿刺における過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.524の事案では、後遺障害の程度や心因性の傷害による素因減額の有無も争点となりました。この点につき、裁判所は、CRPSは多様な症状を呈することがあり、その機序はなお明らかにされていないことを考慮に入れても、控訴人の...

2025年4月10日
No.525「患者の左前腕に点滴ルートを確保する際に、看護師が、過失により、患者の橈骨神経浅枝を損傷し、複合性局所疼痛症候群(CRPS)を発症させたとして病院側の過失が認められた高裁判決」

東京高等裁判所平成29年3月23日判決 ウェストロー・ジャパン (争点) 看護師に穿刺の際に過失があったか否か *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇(昭和51年生まれの女性・短大卒業・正社員として稼働後家族の事情で退職して家事に専念。利き腕は右腕。)は、甲状腺右葉半切除手術(以下「本...

2025年4月10日
No.524「看護師が採血の際に正中神経を損傷し、これに起因する複合性局所疼痛症候群typeⅡ(カウザルギー)を発症させたとして採血手技上の注意義務違反が認められた高裁判決」

東京高等裁判所平成27年3月25日判決 医療判例解説(2019年10月号)82号36頁 (争点) 看護師に採血手技上の過失があるか否か *以下、原告(兼控訴人)を◇、被告(兼被控訴人)を△1ないし△9と表記する。 (事案) ◇(当時20歳の女性・Z大学の通信教育課程在籍)は、平成11年3月28日、民...

2025年3月10日
選択のポイント【No.522、523】

今回は、転落防止措置に関連して病院の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.522の事案では、遺族は、転落事故後、患者の左手に装着されていたミトンが安全ベルトに装着された状態で患者の左手から外れており、右手に装着されていた固定板と安全ベルトを繋いでいたマジックテープがリング上でベッド上に残...

2025年3月10日
No.523「入院中の高齢患者に対する体幹抑制及び上肢抑制が、転倒転落の防止及び点滴の自己抜去防止のために必要やむを得ないものではなく違法と判断して、慰謝料の支払いを病院側に命じた地裁判決」

名古屋地方裁判所令和5年1月20日判決 医療判例解説(2024年12月号)113号15頁ウェストロージャパン (争点) 患者に対する身体拘束が違法であったか否か *以下、原告を◇1および◇2、被告を△と表記する。 (事案) A(当時91歳・女性)は、平成29年(以下、特段の断りがない限り同年のことと...

2025年3月10日
No.522「ICUで治療を受けていた患者が不穏によりベッドから床面に転落して脳死状態になり、その後死亡。病院側に転落を防止し、又は転落により重篤な障害が発生することを防止するために必要な措置を講じるべき義務違反があったとした高裁判決」

高松高等裁判所令和4年6月2日判決 医療判例解説(2023年2月号)102号19頁ウェストロージャパン (争点) 医師及び看護師が、患者がベッドから転落することを防止し、又は転落により重篤な障害が発生することを防止するために、必要な措置を講じるべき義務があったか否か *以下、原告を◇1ないし◇2、被...

2025年2月10日
選択のポイント【No.520、521】

今回は、妊産婦に対する医師や助産師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.520の事案では、一審判決(静岡地裁沼津支部平成30年3月7日判決)も参考にしました。同事案では、一審裁判所も控訴審裁判所も、患者の最初の肺血栓塞栓症の発症については、医師の過失はないと判断しました。しかし、肺血栓...

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