医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.278、279】

今回は、医薬品の添付文書(能書)関する判決を2件ご紹介します。

No.278の判決紹介にあたっては、一審(名古屋地裁昭和60年5月17日判決・ウエストロー)と控訴審(名古屋高裁平成3年10月31日判決・ウエストロー)の判決も参考にしました。

No.278の判決では、麻酔剤の能書きの記載と異なり、5分間隔で血圧が測定されていたため、血圧値の推移が明確ではありませんでしたが、裁判所は、「2分間隔で血圧を測定しなかったという医師の注意義務の懈怠により生じた午後4時40分から45分にかけての血圧値の推移の不明確を当の医師にではなく、患者の不利益に帰すことは条理にも反する」と判示し、2分間隔で測定しなかった医師の過失と、患者の脳機能低下症発症との因果関係を肯定しました。

No.279の判決紹介にあたっては、一審(東京地裁平成23年3月23日判決・判例時報2124号202頁)と控訴審(東京高裁平成23年11月15日判決・判例タイムズ1361号142頁)の判決と各掲載誌の解説文や、判例タイムズ1390号146頁以下の解説文も参考にしました。 

No.279の判決は、抗がん剤イレッサに製造物責任法上の「欠陥」があったかどうかが争点でした。製造物責任法の2条2項は、欠陥の定義として「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」と規定しています。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2015年1月16日
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