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No.551「医療保護入院を決定したこと等について、医師の過失を認めて医療法人及び医師らに慰謝料の支払いを命じた地裁判決」

宇都宮地方裁判所令和7年5月29日判決 医療判例解説(2025年12月号)119号41頁

(争点)

医療保護入院をさせたこと等について、医師の故意・過失の有無

*以下、原告を◇、被告を△ないし△とする

(事案)

◇(平成30年12月当時73歳の男性)は、昭和47年3月、Hと結婚し、長男であるI、次男であるJ、長女であるN及び二女をもうけた。

平成30年当時、◇は妻と同居しており、JとNはいずれも県内に在住し、◇夫婦の二女とIはいずれも東京都内に在住していた。◇は、昭和40年に警察官となり、平成14年に定年退職するまで勤務していた。◇は、平成30年当時、デイサービス業等を行う株式会社を経営していた。

◇が経営していた株式会社名義で平成27年に株式会社Uから受けた融資の使途をめぐって、平成29年頃から、◇とI夫婦との間で度々争いが生じるようになった。

は医療法人であり、精神保健福祉法19条の8所定の指定病院である△病院(以下「△病院」という。)を経営している。

医師は、△病院の創設者であり、平成30年12月当時、△病院の医師(昭和25年から医師の資格を有する)であった。△医師(大正14年生まれ)は、昭和25年から医師の資格を有し、平成30年当時も週5日間程度精神科の外来診療を担当するなど△病院の精神科における中心的役割を担っていた。もっとも、△医師は同年当時指定医の資格を有していなかった。

医師は、平成30年12月当時、△病院の医師であり、指定医であった。

医師は、平成30年12月当時、△病院の院長兼精神科病院の管理者であった。なお、△医師が△の理事長に就任したのは、令和4年6月1日のことである。

△病院の指定医であるE医師及びF医師は、いずれも△医師の息子であるほか、△病院では、△医師の子が複数名勤務していた。

△病院における精神科の外来患者の診療体制として、平成30年12月当時、皮膚科と精神科を兼務する△医師、いずれも精神科のE医師とF医師が指定医であったところ、△医師が精神科の外来患者について医療保護入院が必要であると診断した場合に、この3名のうち、誰が指定医として、当該患者を診察するかを割り当てるシフト表が作成されており、このシフト表に基づいて、△医師から診察の引き継ぎがされていた。

また、△医師は、精神科の医師として、△医師から引き継がれた精神科の外来患者や医療保護入院中の患者の診察を行っていた一方で、精神科の外来患者を最初に診察することはしていなかった。

◇は、平成22年8月9日から、リウマチ性多発筋痛症の治療のため、かかりつけ医であるD医師のいるⅤ病院に通院して、プレドニンの処方を受けるなどしていた。なお、D医師は、◇の診断書(令和5年11月24日付)において、本件医療保護入院の開始前、同病院の診察室で、◇に易怒性、興奮、多弁、幻聴、妄想及び幻覚等の症状を認めたことはなかったとしている。

平成30年10月22日から同年12月12日にかけて、△病院のソーシャルワーカーは、Iと複数回面談を行い、同人から、◇の症状に係るエピソードとして、(1)平成27年頃から易怒的になって、◇が経営するデイサービスの従業員に暴言を吐いたり、拳を振り上げて追いかけたりしていること、(2)被害妄想があること、(3)海老の養殖に200万円を投資すれば、何億円も儲かるという内容の詐欺に騙されそうになったこと、(4)空を見てぶつぶつ言ったり、空中に向かって手を伸ばしてしていること、(5)家族に暴言を吐いたり、物を壊したりすることもあること等を聴取した。ただし、Iがソーシャルワーカーに◇の症状を裏付ける資料を提出することや、ソーシャルワーカーがI以外の者から、◇に関する話を聴取することはなく、△医師らがIから直接事実の確認をすることもなかった。

平成30年12月12日午前6時30分頃、◇は、民間救急サービスを営むW社の職員によって市内の職場から無理やり連れ出され、同社の民間救急車に監禁されて、△病院に来院した。

△病院に来院後、△医師は、◇を診察し、◇について、老年期認知症妄想型を有する「精神障害者」であり、医療保護入院の必要があると診断した。この際に作成された診療録には、「al20g(飲酒歴が20年との意味。)、1合、1升。キン(―) (禁断症状がないとの意味。)」、「Police(過去の職歴を兼ねる質問への◇の回答を記載したもの。)」「Ref (+) (内省現象があると意味。)」、「医療保ゴ」、「Zelle(500円)」、「任意×医保」などの記載がある一方で、◇が興奮していたことや不穏な言動をしていたことを窺わせる記載は特に見当たらなかった。

医師は、上記シフト表に基づき、△医師に◇の診療を引き継いだ。△医師は、◇を診察し、◇について、老年期認知症妄想型を有する「精神障害者」であり、医療保護入院の必要があると診断し、◇を医療保護入院とすることとして、△病院の職員に対し、◇の医療保護入院について、Iの同意を得るよう指示した。この際に作成された診療録には、◇について、(1)Iが依頼した民間タクシーに乗って、△病院まで連れて来られたこと、(2)△医師の診察に怒って診察室を出て行ったが、ソーシャルワーカーが診察室に戻るように話したところ、素直に診療室に戻ったこと、(3)挨拶はできるが、Iの妻に迷惑を掛けられているなどと一方的に話すこと、(4)家族や周りの人々が困ってないかと質問すると、言葉を遮るように、これを即座に否定したこと、(5)入院の必要があると説明しても「自分は大丈夫だから入院しない。」と回答したこと等が記載されている。

医師の診察後、Iの同意が得られたことで、平成30年12月12日午後0時55分、◇は△病院において医療保護入院となった(本件医療保護入院)。△医師は、同月13日になって初めて、本件医療保護入院の存在を把握し、Iの同意書や△医師の診療録等を確認して、同月14日、県知事に対し、入院届をIの同意書を添えて提出した。

医師が県知事に提出した、◇に関する平成30年12月14日付の医療保護入院者の入院届(以下「入院届」という。)には、以下のような記載があった。

(ア)入院形態:医療保護入院(イ)病名(主たる精神障害):老年期認知症妄想型(ウ)現在の精神症状:記銘障害、妄想、感情失禁、焦燥・激越、易怒性・被刺激性亢進、衝動行動、行為心迫、興奮(エ)問題行動等:暴言、その他(暴力行為)、(オ)現在の状態像:幻覚妄想状態、精神運動興奮状態、認知症状態(カ)医療保護入院の必要性:認知症が進行して、記銘力や判断力の低下から詐欺に引っかかりそうになったりして物事が上手くいかなくなった。その頃より、被害妄想が活発となり、他者や家族に対して暴言や暴力行為がしばしばみられ、早急な入院が必要な状態になった。しかし、本人は現実検討能力の低下から、入院治療を拒否して同意が得られず、このままでは必要な治療を行えないため、長男の同意のもと医療保護入院とした。

平成30年12月12日、◇の妻Hは、△病院の主治医宛てに、プレドニンについて記載されている◇の診療明細書をファックス送信した。

しかし、本件医療保護入院が開始されてから平成31年1月12日までの間、◇にプレドニンが処方されなかったため、◇は同薬剤を服用できなかった。

本件医療保護入院が開始されてから平成30年12月13日午後2時40分頃までの間、◇は、閉鎖病棟の個室3号室において、1人で起居することとなった。

平成30年12月13日午後2時40分頃、◇は、3号室から閉鎖病棟の7号室(4人部屋)に移り、同月22日までの間、同室において起居した。

そして、同日午後4時頃、本件医療保護入院が終了したため、◇は、閉鎖病棟から普通病棟へと転棟して、普通病棟において入院を継続した。

平成30年12月12日、△医師は、◇に対し、向精神薬であるリボトリール及びロナセンを処方し、同日から平成31年1月16日までの間、◇は各薬剤を服用し続けた。

平成30年12月19日午前11時20分頃、Jから△病院宛に電話があり、Jは、看護主任に対し、「今回、父(◇)の入院ですが、兄(I)とその嫁が決めたことであり、私たち兄弟は今回の入院を納得していません。父をゆくゆくは退院させ兄からかくまってあげたいと考えています。兄と父がお金のことで揉め、父が訴えを起こすと言い関係が悪化しました。その兼ね合いで精神科病院に入院させられてしまったようです。・・・母に尋ねても父の認知的異常は強くなく歳相応だと思います。兄夫婦が今度は母を精神病院に入院させてやると言っています。ソーシャルワーカーにも相談しています。この電話があったことは兄には内緒でお願いします。」と述べた。これを受けて、同日午前11時45分頃、同主任が、◇に対し、◇の家族構成を尋ねたところ、◇は答えるとともに、I夫婦の不満を繰り返し述べた。同主任は、看護記録に「Jの電話の話と、家族構成・職種ともに一致している。Jと◇の話の内容も一致している」旨記載した。

上記Jの話を受けて、△医師は、同日、△病院の職員に対し、退院後の帰住先と監督者が決まれば、◇は退院可能であるなどと指示した。

そして、ソーシャルワーカーは、同日、◇との面会に訪れた妻Hに対し、△医師からの指示により、△病院が◇の家族間のトラブルに介入することはできないため、家族間で◇の治療方針について決めて欲しいなどと伝えた。さらに、ソーシャルワーカーは、同月20日、Jに対し、帰住先の確保と家族の責任での引き取りをして欲しいと△病院としての意向を伝えたところ、Jは、アパートを借り、Iには居場所を教えずに◇とHで暮らしてもらおうと考えているなどと返答した。ソーシャルワーカーは、Jに対し、△病院としては、家族問題に介入することができないので、家族間で話し合って決めて欲しい、Jが◇を迎えに来ることをIが知らなかったということはないようにして欲しいなどと伝えた。

同月22日、Iが、△病院の職員に対し、◇が脱走を考えているような動きがあるので、精神科に戻すなどの対応をして欲しいなどと伝えた。

同月30日、Hが△病院に来院して◇と面会した。△病院の職員が、Hに対し、◇の入院についてどのような認識かを確認したところ、Hは、最強の親子喧嘩だと思っているなどと回答した。また、同日、Iは、△病院の職員に対し、内科での治療が終わったら精神科に戻るのか、◇が△病院から脱走を企てているとしか思えないなどと述べた。

平成31年1月7日、△医師は、◇を非認知症であると診断した。

◇は、平成31年1月17日、△病院を退院した。

◇は、医療保護入院に始まる△病院で受けた措置は◇の身体の事由等の権利利益を侵害する不法行為である等と主張し、△医師らに対しては民法709条及び同法719条1項前段に基づき、△に対しては、同法715条1項に基づき、損害賠償を求めて提訴した。

(損害賠償請求)

請求額:
1467万7149円
(内訳:医療保護入院に始まる措置に対する被告4名連帯での損害賠償1357万7149円+診療録開示拒絶に対する△への損害賠償110万円)

(裁判所の認容額)

認容額:
被告4名連帯で331万7863円
(内訳:診療費用20万9250円+慰謝料250万円+証拠保全費用12万7633円+弁護士用28万円)

(裁判所の判断)

医療保護入院をさせたこと等について、医師の故意・過失の有無
(1)△医師について

この点について、裁判所は、まず、かかりつけのD医師は、本件医療保護入院の開始前に、◇に易怒性、興奮、多弁、幻聴、妄想及び幻覚等の症状を認めたことはなかったとしていること、平成30年12月15日の◇の頭部顔面の画像診断によっても非特異的変化が疑われるのみで、脳の萎縮等の異常も認められず、△医師の指示により行われた同月21日のHDS―R(長谷川式簡易知能表化スケール)の結果も21点(20点以下が認知症の疑いありとされる)であり、平成31年1月7日の時点で△医師は◇が非認知症であると診断していたものであるから、本件医療保護入院の時点で、◇が、精神障害者であり、かつ医療及び保護のために入院の必要がある者であったというには相当な疑問が残ると判示しました。

そして、△医師本人は、診察時の◇の様子について、病的な興奮状態にあったなどとも供述するところ、△医師の診療録の記載等から、△医師の診察において、◇が一定の混乱状態にあったことが窺われると指摘しました。しかし、◇は当日、車に乗せられて無理やり職場から△病院に連れて来られたのであって、◇が想定外の事実に驚愕していたことは想像に難くなく、このような◇の置かれた状況に鑑みれば、◇が一定の混乱状態にあったとしても、その理由は了解可能であるといえるとしました。そして、ソーシャルワーカーの説得に応じて素直に診察室に戻る、△病院の看護師に対し、薬剤の効能を落ち着いた言葉で確認するなど、本件医療保護入院当日の向精神薬を服用する前の時点においても、◇が落ち着いた態度を示していることも併せて考慮すれば、△医師の診察時の◇の状態として、Iの相談内容を裏付けるような病的な興奮状態にあったとは認められないと判示しました。

裁判所は、結局のところ、診察時の◇の様子から、Iの相談内容が真実であると判断し得るだけの合理的根拠は見出し難く、Iの相談内容や、これを即座に否定する◇の態度のみをもって、認知機能の低下、情緒易変性、易刺激性等が認められるとするのは、代表的な認知症の診断基準及び精神科救急ガイドラインの定めに照らしても、不適切な判断というほかないと判示しました。◇について、他に老年期認知症妄想型を窺わせる症状も特に見当たらないのに、一般的に必要とされる認知機能検査も実施しないまました△医師による前記診断やこれに基づく本件医療措置入院の決定は、◇が、精神障害者であり、かつ医療及び保護のために入院の必要がある者であったとの判断として誤りがあり、△医師にはその判断をするについて過失があったというべきであると判断しました。

ところで、裁判所は、△医師は、指定医でも、△病院の管理者でもなく、医療保護入院に関する形式的権限は何ら有しておらず、本件においても、△医師の診察後に指定医である△医師の診察を経て本件医療保護入院が始まっているのであるから、△医師が◇に対する不法行為責任を負う根拠について疑問がないとはいえないとしました。しかしながら、△病院においては、△医師が精神科の外来患者について医療保護入院が必要であると診断した場合に、当該患者を診察する指定医のシフト表が作成され、これに基づいて△医師から診察の引き継ぎがされる態勢が整備されていたこと、本件医療保護入院の当日、最初に◇を診察したのは△医師であり、△医師の診療録には、◇について、「医療保ゴ」、「Zelle(500円)」、「任意×医保」と医療保護入院を決定すべきと認める記載があること、指定医である△医師ですら一般的に必要とされる認知機能検査を実施しないまま、◇の問診のみで本件医療保護入院を決定していること等の事実に加え、△病院における△医師の立場を踏まえれば、本件医療保護入院に関する限りにおいて、△医師は指定医と同視することができるというべきから、医療保護入院を実質的に決定したのは、△医師であったと評価するのが相当であると判示しました。

次に、向精神薬の投与について、本件医療保護入院が違法である以上、違法な入院状態を前提として行われた向精神薬の投与を始めとする治療も、同意なく◇の身体の自由等を侵害するものといわざるを得ないから、本件医療法入院の決定に関与し、これらを処方した△医師には、少なくとも過失が認められるとしました。

更に、リウマチ性多発筋痛症への対応について、本件医療保護入院が開始されてから平成31年1月12日までの間、◇にプレドニンが処方されなかったため、◇は同薬剤を服用できなかったとの事実が認められるところ、このような対応によって、この間、◇の適切な医療を受ける権利利益が侵害されたといえるとしました。

そして、平成30年12月12日、春江は、△病院の主治医宛に、プレドニンについて記載されている◇の診療明細書をファックス送信している事実が認められるから、同日の時点で、主治医である△医師は、◇がプレドニンを服用していたことを認識できたと考えるのが自然であるとしました。裁判所はそうであるとすると、△医師が、◇に対し、プレドニンを処方しなかったのは、医療水準に反するものといわざるを得ず、この点については過失が認められるとしました。

また、△病院における検査や治療について、裁判所は、本件医療保護入院が違法である以上、違法な入院状態を前提として行われた各種検査や向精神薬の処方以外の治療についても、同意なく、◇の身体の自由等を侵害するものと評価できるから、本件医療保護入院を決定した△医師には、少なくとも過失が認められるとしました。

加えて、◇への治療の説明について、向精神薬の副作用については、△医師が◇に対し、向精神薬の処方に際して、その副作用について説明しなかったとの事実が認められるところ、本件医療保護入院の開始時に、◇を「精神障害者」であると診断することは誤りであったと認められる以上、△医師が、◇に対し、向精神薬の副作用について説明しなかったことは、◇の自己決定権も侵害するものであり、この点について、少なくとも△医師には過失が認められるとしました。

そして、向精神薬の減薬指導についても、◇が退院するに際し、◇に対して向精神薬の減薬指導は特に行われなかったとの事実が認められるところ、リボトリールの添付文書には、連用中に服用を中止すると、離脱症状等も現れるおそれがあるため、投与を中止する場合は、徐々に減量するなどしなくてはならないと記載されていることからすると、向精神薬の減薬指導が行われなかったことは◇の自己決定権を侵害するものといえるとしました。裁判所は、そして、◇に向精神薬を処方した△医師は、少なくともリボトリールについては、自ら適切な減薬指導を行う、または内科主治医に対して適切な減薬指導を行うよう指示すべき注意義務を負っていたというべきであるところ、内科主治医が減薬指導していないことを踏まえると、△医師は、内科主治医に対して、リボトリールの減薬指導を行うよう指示していなかったと考えるのが自然であり、△医師にはこの点についての過失が認められるとしました。

それから、△病院での入院が継続したことについて、本件医療保護入院の必要性がないことが明らかとなった平成30年12月19日以降は、特別の事情がないかぎり、直ちに本件医療保護入院を終了させ、◇を退院させるべきであったことは自明であり、そうであるにもかかわらず、同日以降も、△病院での入院を継続させたことは、違法に身体の自由等を侵害するものというべきであるとしました。裁判所は、この点について、本件、医療保護入院を実質的に決定した△医師には、過失が認められるとしました。

裁判所は、△医師については、◇に対し、本件医療保護入院を実質的に決定したこと、向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与をしたこと、リウマチ性多発筋痛症への対応をしなかったこと、△病院における検査や治療をしたこと、治療の説明(向精神薬の副作用等の説明及び減薬指導)をしなかったこと及び△病院での入院が継続したことについて、不法行為を構成するとしました。また、これらについては△も使用者責任を免れないと判示しました。

(2)△医師について

裁判所は、△医師と同様に、◇について、他に老年期認知症妄想型を窺わせる症状も特に見当たらないのに、一般的に必要とされる認知機能検査も実施しないまま、◇を「老年性認知症妄想型」とした診断やこれに基づく本件医療措置入院の決定をした△医師の判断には、少なくとも過失があり、本件医療保護入院の決定は、違法に◇の身体の自由を侵害するものであったといわざるを得ないとしました。

また、裁判所は、△医師は、◇に対して向精神薬(リボトリール及びロナセン)を処方したものではないが、△医師は、指定医として◇を診察し、本件医療保護入院を決定した者であることからすれば、△医師が、◇に対する精神科治療を適切に行っているかどうかについて監視監督する注意義務を負っていたというべきであり、△医師の違法な投薬治療を追認ないし看過した△医師には少なくとも過失があるとしました。

△病院における検査や治療について、裁判所は、本件医療保護入院が違法である以上、違法な入院状態を前提として行われた各種検査や向精神薬の処方以外の治療についても、同意なく◇の身体の自由等を侵害するものと評価できるから、本件医療保護入院の決定に関与した△医師には少なくとも過失が認められると判断しました。

更に、△医師は、指定医として◇を診察し、本件医療保護入院を決定したものであることからすれば、△医師が、◇に対する精神科治療を適切に行っているかどうかについて監視監督する注意義務負っていたというべきことは、前記と同様であり、◇の主治医が適切な説明等をしていない場合には、治療内容や処方する薬剤について、自ら説明し又は他者(医師、薬剤師、ケースワーカー等)をして適切な説明をさせる注意義務を負っていたというべきであると指摘しました。

裁判所は、そうすると、これを怠った△医師の不作為については、少なくとも過失があると判示しました。

△病院での入院が継続したことについても、裁判所は、本件医療保護入院の必要性がないことが明らかとなった平成30年12月19日以降は、特別の事情がない限り、直ちに本件医療保護入院を終了させ、◇を退院させるべきだったことは自明であり、そうであるにもかかわらず、同日以降も△医師が△病院での入院を継続させたことは違法に◇の身体の自由等を侵害するものというべきであって、本件医療保護入院を決定した指定医である△医師には過失が認められるとしました。

裁判所は、△医師については、◇に対し、本件医療保護入院を決定したこと、向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与をしたこと、△病院における検査や治療をしたこと、治療の説明(向精神薬の副作用等の説明及び減薬指導)をしなかったこと及び△病院での入院が継続したことについて、不法行為を構成し、また、これらについては△も使用者責任を免れないと判示しました。

(3)△医師について

この点について、裁判所は、本件医療保護入院について、△医師は、医療保護入院の権限を有する精神科病院の管理者として、医療保護入院の要件が充足されているかについて、自ら判断する注意義務を負うというべきであるとしました。そして、△医師は、△医師と△医師の診断及び本件医療保護入院の決定を追認しており、とりわけ、本件医療保護入院があった事実を△医師が知ったのは、本件医療保護入院がされた日の翌日であったというのであるから、△医師には精神科病院の管理者としての過失が認められると判示しました。

次に、向精神薬の投与について、△医師は、◇に対して向精神薬(リボトリール及びロナセン)を処方したものではないが、△医師が医療保護入院及び退院の決定権限を有する精神科病院の管理者であることからすれば、医療保護入院の対象者である患者の動静について常に気を払い、患者に対する精神科治療が適切に行われるかどうかについて監視監督する注意を負っていたというべきであり、△医師の違法な投薬治療を追認ないし看過した△医師には少なくとも過失があるとしました。

△病院における検査や治療について、裁判所は、本件医療保護入院が違法である以上、違法な入院状態を前提として行われた各種検査や向精神薬の処方以外の治療についても同意なく、◇の身体の自由と侵害するものと評価できるから、本件医療保護入院の決定を追認した△医師には、少なくとも過失があるとしました。

更に、◇への治療の説明について、裁判所は、△医師は、管理者として医療保護入院の決定権限を有し、△医師及び△医師の本件医療保護入院の決定を追認した者であることからすれば、主治医である△医師が、◇に対する精神科治療を適切に行っているかどうかについて監視監督する注意義務を負っていたというべきであると指摘しました。そうすると、◇の主治医が適切な説明等していない場合には、治療内容や処方する薬剤について、自ら説明し又は他者(医師、薬剤師、ケースワーカー等)をして適切な説明をさせる注意義務違反を負っていたというべきであると判示しました。

そうすると、これを怠った△医師の不作為については少なくとも過失があるとしました。

加えて、△病院での入院が継続したことについて、本件医療保護入院の必要性がないことが明らかとなった平成30年12月19日以降は、特別な事情がない限り、直ちに本件医療保護入院を終了させ、◇を退院させるべきであったことは自明であり、そうであるにもかかわらず、同日以降も△医師が△病院での入院を継続させたことは違法に◇の身体の自由等を侵害するものというべきであって、本件医療保護入院の決定を追認した管理者である△医師にも過失が認められると判示しました。

裁判所は、△医師については、◇に対し、本件医療保護入院を決定したこと、向精神薬(リボトリール及びロナセン)の投与をしたこと、△病院における検査や治療をしたこと、治療の説明(向精神薬の副作用等の説明及び減薬指導)をしなかったこと及び△病院での入院が継続したことについて、不法行為を構成し、また、これらについては△も使用者責任を免れないと判示しました。

以上から、裁判所は、上記(裁判所の認容額)の範囲で◇の請求を認め、その後判決は確定しました。

カテゴリ: 2026年5月11日
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