医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.430、431】

今回はカテーテルを用いた治療に関する医師の過失が認められた判決を2件ご紹介いたします。

No.430の事案では、手術を見学していた患者の主治医(研修医)が、問題となった2回目の閉塞試験につき、左椎骨動脈の後下小脳動脈との分岐部より遠位で実施されたとの記載をカルテにしていました。この点に関して、当該主治医は、「2回目の閉塞試験の部位については書き間違えたものであり、その後に手術担当医から記載の誤りを指摘され、血管造影検査のフィルムを自ら見直してその誤りを確認したが、カルテの記載を訂正することを忘れていた」と証言しました。

しかし、裁判所は、「主治医は、1回目の閉塞試験の部位、本閉塞の部位については正しくカルテに記載しているのであり、しかも、2回目の閉塞試験の部位をカルテに図示までしているのであるから2回目の閉塞試験の部位につき主治医がカルテに誤った記載をしたとは考えがたく、まして、医師がカルテ記載の誤りを指摘され、その誤りであることを確認しながら、カルテの記載を忘れるなどということは、およそ考えられないことであって、そのような主治医の証言は到底信用できない」と判示して、当該主治医の証言を採用しませんでした。

No.431の事案で、患者側は、腹膜透析用カテーテルが腹腔外に挿入されたことも過失である旨主張しました。

しかし、裁判所は、「医学的知見や医師の意見書を踏まえて、カテーテルが腹腔を捉えなかったことをもって、直ちに不法行為上の過失まで構成するというには疑問が残るのであり、腹膜透析用カテーテルが腹膜前脂肪層に迷入した本件位置異常が、不可避合併症とはいえない手技上の過失であるとまでいうことはできないとして、この点に関する患者の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2021年5月10日
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