医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.210、211】

今回は、肺癌で死亡した方が受診していた集団検診・定期健康診断でのレントゲンフィルムの読影担当医師の過失が争点となった判決を2件ご紹介します。

No.210の事案で、裁判所は、本件で問題になっているのは、政策的な意味合いにおける集団検診のあり方ではなく、集団検診におけるレントゲンのフィルムを読影する医師の注意義務の有無であるとし、具体的な個々の案件において、債務不履行又は不法行為をもって問われる医師の注意義務の基準となるべきものは、一般的には診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であると判示しました。

No.211の事案紹介にあたっては、一審判決(東京地裁平成7年11月30日判決・判例タイムズ911号200頁)及び上告審判決(最高裁ニ小平成15年7月18日判決・労働判例862号92頁)も参考にしました。

この事案では、レントゲン写真の読影と診察をした医師の過失を認めながらも、延命利益の喪失との間の相当因果関係は無いとして、損害賠償請求は認められませんでした。

上告審判決自体は、原審(控訴審)の判断を是認する内容ですが、一人の裁判官が反対意見で「原審としては被上告会社における健康診断が、どのような水準のものとして実施することを予定されていたかを確定し、その水準をみたすものであったかどうかを審理判断すべきであったのに、一般臨床医の医療水準に照らして過失の有無を判断したのは、審理不尽の結果、法令の適用を誤ったものといわざるを得」ないとして破棄差し戻しにするのが相当である旨を述べています。

両事案とも、実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2012年3月 2日
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