医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.552、553】

今回は帝王切開の遅れや不実施に関して病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介します。

No.552の事案では、病院側は、産科ガイドラインが、胎児心拍数波形のレベル分類を、10分区画ごとにCTGを判読し、判定するものとしていることを指摘して、同日午後7時54分に遷延一過性徐脈があったからといって、同日午後8時30分頃もまだ連続モニタリングをしなければならなかったとはいえないと主張しました。しかし、裁判所は、本件のように臍帯巻絡が原因の場合、一時的に臍帯への圧迫がかからない体位になれば、一過性徐脈自体は改善されてしまうから、体位転換により、胎児well-being(健康状態)を障害する当該原因が解決したわけではなく、原因が明らかでなければ、連続監視の必要性が減少するわけではないと指摘しました。そして、産科ガイドラインは、遷延一過性徐脈(レベル3)に応じた対応と処置として、少なくとも、助産師に、医師への報告も、医師に、原因検索も求めており、母体の体位変換をもって、その後10分間以上CTGの胎児心拍数が160bpm前後で推移したからといって、求められた対応と処置が尽くされたと評価できるわけではないと判示しました。また、産科ガイドラインによれば、胎児心拍数波形のレベルに応じた対応と処置とは別に、妊婦の体温は38.0℃以上であったから、推奨レベルBとして、連続モニタリングが求められていたと判示して、病院側の主張を採用しませんでした。

No.553の事案では、病院側は、出生した子は胎児の時点で早発型GBS感染による髄膜炎を発症していた蓋然性が高く、その影響で脳障害を起こしていた可能性が高いから、被告病院の医師らが緊急帝王切開を実施していたとしても良好な神経学的予後を確保できていたとは限らず、医師らの義務違反と子に後遺障害が残ったこととの間には相当因果関係が認められないと主張しました。

しかし、裁判所は、子が胎児の時点でGBSに感染していたことはうかがわれるものの、髄膜炎を発症するなどの重篤な状態にあったことを認めるに足りる証拠は存在しない、後医の医療記録を検討しても、子が出生時に髄膜炎を起こしていたことをうかがわせる所見も検査結果も認め難いと判示し、子が胎児のときのGBS感染の影響により既に脳障害を起こしていた蓋然性が高いとは認め難く、子がGBSに感染した状態で出生していたからといって、そのことだけで、被告病院の医師らが緊急帝王切開を実施せずに、長時間にわたって子を低酸素状態下に置いたことと子に本件後遺障害が残ったこととの相当因果関係が否定されるとはいえないと判断し、被告の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2026年6月10日
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