医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.438、439】

今回は、分娩方法の選択に関連して医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介いたします。

No.438の事案で、病院側は、分娩方法選択は医師の裁量の範囲内にあると主張しました。これに対し、裁判所は、もとより、複雑な分娩機序と分娩の個別性にかんがみれば、一般論としては、産科医が分娩方法として帝王切開術を選択、実施するか否かは、その高度の知識、経験、技量に裏打ちされた専門的裁量に属することは病院側が強調するとおりであるが、本件のように前提として当然なされるべき資料収集が十分になされなかった場合やそれに正当な評価を与えなければ、およそ適切な分娩方法の判断をなしえないのであるから、これを医師の裁量問題に併呑することの誤りは明らかであって、右主張は採用できないとしました。

No.439の事案では、陣痛促進剤オキシトシンを投与した医師が、産婦に対して、主に陣痛促進剤の投与の必要性を告げたのみで、薬剤の名称やその危険性につき何の説明もしていませんでした。裁判所は、当該医師は説明義務を怠ったと評価し、もっとも、オキシトシンの投与方法が誤っていたために胎児仮死が生じたとまで認めることはできないとして、当該医師については、説明義務を懈怠したことによる慰謝料を払う義務だけを認定しました。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2021年9月10日
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