医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.556、557】

今回は、説明義務違反が争点となった裁判例を2件ご紹介します。

No.556の事案では、病院側は、患者が植皮手術を受けなかった蓋然性は認められず、また、でん部を採皮部とする手術を選択する合理性もないから、説明義務違反と本件手術との間の相当因果関係はないと主張しました。しかし、裁判所は、本件手術は一刻を争うなど特に緊急性を要するものであったとは認められない上、患者が本件病院の医師から植皮手術を提案されるも、本件手術まで植皮手術を受けることはなく、他の医療機関を受診するといった行動をとっていること、加えて、植皮手術における採皮部分としては、頭部のほかにも、でん部、大腿及び背部などが、採皮部となる余地があり、他の部位を選択することの合理性も十分にあったことからすれば、手術後の整容について関心を抱いていた患者の両親において、本件手術による禿髪のおそれなどを説明された場合になお本件手術を受けることに同意したとは考え難いとして、病院側の主張を採用しませんでした。

No.557の事案の紹介にあたっては、一審判決(令和5年12月14日神戸地裁判決)も参考にしました。

一審で病院側は、本件ミエログラフィー実施前の段階で、患者がいち早く歩けるようになって自宅に戻りたい旨を強く要望していたことからすれば、法的に要求される説明を尽くしていたとしても、患者はL1/2の穿刺を承諾していた可能性が極めて強く、説明義務違反と損害との間に因果関係がない旨主張しました。しかし、一審裁判所は、L1/2への穿刺は、通常行われるミエログラフィーの際に選択される穿刺箇所への穿刺とは、内容・程度等が明らかに質的に異なる重大なリスクを伴うものであるのに対し、本件ミエログラフィーは術前評価のために行うにすぎず、患者の症状を直接解決するものではなく患者の上記要望実現には直結しないし、術前評価としても限界があるものであることをも踏まえると、上記リスク告知を含む適切な説明が尽くされていれば、患者がL1/2の穿刺によるミエログラフィーを受けなかった高度の蓋然性があるといえるとして、病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2026年8月 7日
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