今回は、病院側の注意義務違反と患者(受診者)の死亡との間の因果関係は否定されましたが、注意義務違反がなければ(注意義務を尽くしていれば)患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性があったと認定した判決を2件ご紹介します。
No.558の事案では、患者遺族側(控訴人ら)は、平成22年内視鏡検査において、胃穹㝫部を撮影した写真が全体20枚中わずか2枚とごく少なく、その2枚が異常部位を正確に撮影したものではない事実は、担当医師が、当該病変部位を精査せず、病変部位を見落としていた可能性を基礎づけるものと評価することができる旨主張しました。しかし、控訴審裁判所は、平成22年内視鏡検査において、担当医師は、平成21年部位に該当する部分について腫瘤用の病変の有無を観察した結果、それが認められないとの診断をしたものと考えられ、異常所見がなければあえてその部分に接近して撮影しないと考えられることにも照らし、控訴人らの主張するような写真についての指摘をもって、担当医師が、当該病変部位を精査せず、病変部位を見落としていたことが導かれるものとはいえないと判示して、患者遺族側の主張を採用しませんでした。
No.559の事案では、慰謝料800万円を相当と判断するにあたり、裁判所は、腹部造影CT検査の読影報告書には、肝細胞癌の疑いがあること、EOB造影MRI検査の適応であることの記載が含まれているにもかかわらず、医師は約2年8か月もの長期間にわたり、検査をすることなく肝細胞癌を発見できなかったとして注意義務違反の程度は大きいと指摘しました。更に、患者は、被告病院において消化器専門医の受診を継続していたにもかかわらず、約2年8か月もの間、再発率が高く生存率の高くない疾患である肝細胞癌の確定診断を受けることができず、放置されたまま、その治療を受ける機会を失ったと指摘しました。そして、患者が、早期に発見されていれば完治できていたのではないかとの期待を抱くのは無理からぬことであるところ、この期待を失わせる結果となり、治療を受けることのないままに肝細胞癌を進行させた上、交渉過程において、被告病院の院長が注意義務違反を否定する発言をするなどしていたのであるから、本件注意義務違反によって患者の受けた精神的苦痛は極めて大きいというべきであると判示しました。
両事案とも実務の参考になるかと存じます。














